歩道通行の事故で約1億円の賠償金も

 どうしても『歩道通行』を選択する場合は、ルールを守り、事故のリスクも知っておく必要がある。自転車と歩行者の事故では大きな責任が問われるからだ。数千万円の賠償金を支払わなければならないケースもあり、たとえ未成年でも加害責任は免れない。

 au損保によると、自転車による加害事故では次のような例もあった。

 2013年、神戸地方裁判所にあった判決で、男児が夜自転車で走行していたところ、62歳の女性歩行者と正面衝突し、女性は意識不明の重体となった。9521万円の賠償金の支払いが命じられたという。

 また、2008年には、東京地方裁判所での判決で、男子高校生が歩道から車道を斜めに横断していたところ、対向車線を自転車で直進していた24歳男性に衝突し、その男性には後遺障害が残った。判決は9266万円の賠償金だった。

 自転車保険の加入者も増加中だ。東京都をはじめ、多くの自治体で自転車保険の加入を義務化するようになった。毎月、数百円で加入できるので、この機会に加入も考えておきたい。

自転車専用レーンの色を変えたり矢羽根マークをつけた道路整備が進む
自転車専用レーンの色を変えたり矢羽根マークをつけた道路整備が進む
【写真】歩道通行の自転車、車のドライバー目線ではどう見える?

 前出の古倉さんは、『歩道』を選ぶ人たちのルール違反に警鐘を鳴らす。

「どうしても歩道を選ぶ人は、歩行者優先で車道寄りを徐行が鉄則。徐行とは大人が早歩きするくらいのスピードです。また、歩道と車道を行き来する走行はドライバーの判断を迷わせて事故につながるのでやめてください。歩道を走る場合は歩行者用信号、車道は車両用信号に従うこと。歩道は車のドライバーの死角になると認識し、一時停止で安全確認と細心の注意を払えることが大前提ですね」

 とはいえ、自転車走行のいちばんの安全策は「車道左側を堂々と走る。一時停止で確実に止まる」。これだけで、事故リスクは確実に減少することをお忘れなく。

(取材・文/小泉カツミ)