「マッキーの歌は心の中に迫ってくる」

 初期の楽曲の魅力について、坂本ちゃんも興奮ぎみに話す。

『桜坂』と聞くと、一般的には福山雅治さんだと思うのですが、マッキーファンだったら槇原さんの『桜坂』一択。街を離れていく友達を見送る曲なのですが、春特有の希望と不安が伝わってくるんです。

 私、当時は甲府の本屋で働いていたんですけど、雑誌担当だったので、槇原さんが登場している雑誌に勝手にポップを作って、片田舎で宣伝部長をするくらい好きでした。槇原さんの曲って、心の中にまで迫ってくる感じなんですよ」

 読者からは「まるで自分のことを歌っているかのよう」という意見が多いことも特徴。「“僕”と“君”という主語が使われているから自分を重ねやすい」と坂本ちゃんがいうように、心の中に入り込んでくるマッキーの歌詞に魅了される人が後を絶たない。

「マフラー、コンビニ、地下鉄の改札など、具体的な小道具を入れることでどういう歌になるかが、彼の中で“技”としてできあがっている。

『ANSWER』の冒頭、“地下鉄の改札で急に咳が出て”というフレーズは、その歌の背景や主人公の状態などを想像させますし、その世界観に一気に引き込まれる。絶妙なメロディー、情景描写、そして心理描写のディテール。突出した才能だと思います」(田家氏)

 具体的なフレーズをちりばめるからこそ、映画のワンシーンのように状況が浮かび上がる。「槇原さんの曲って頭に入ってきすぎて“ながら”で聴けないの!」と坂本ちゃんが笑うように、自分を投影しやすく楽曲に没入してしまう魅力を越えた魔力がある。

 「ベストソングを選ぶとしたら?」そう坂本ちゃんに聞くと、

「もう全部ですよ~(笑)。でも、思い入れの強い曲を挙げるとしたら、『電波少年的東大一直線』で受験勉強をしていたときに、よく聴いていた『遠く遠く』。今でも私とケイコ先生は、この曲を聴くと涙があふれてきちゃうくらい。『Ordinary Days』もそう。“賢くなって自分を守れ”というフレーズがあって、勝手に自分たちへの応援ソングだと思って受験勉強をしていました」