被害者が回復しても
加害者には戻らぬ日常生活

<殺人犯の家族>
<人殺しの家>

 もし被害者が亡くなるようなことがあれば、世間からそう呼ばれ、日本中を逃げ回るような生活になる。由紀は、住民から投げつけられた言葉が頭を離れず、気を失いそうになっていた。
 
 被害者が搬送された病院に向かうと、被害者は意識を取り戻していた。しかし、これからまた手術が必要であり、その後、日常生活に支障をきたす可能性も大きいという。

 由紀は、毎日病院に見舞いに行き、家族にも謝罪し続けた。事故が起きた日から熟睡することができず、食事も喉を通らなくなった。由紀の家族は子どもが三人で、夫の収入だけで家計を支えており、経済的な余裕はない。治療費の出費だけでも赤字だった。この先、どれだけの経済的負担を背負うのか、将来の不安に悩まされる生活が続いた。

 事故から1か月が経ったころ、被害者は順調に回復し、事故前と変わらない生活を送ることができるように。被害者も家族も謝罪は十分だと、息子を許してくれていたが、由紀と家族にこれまでのような日常は戻らなかった。

 由紀はパトカーや救急のサイレンを聞くたびに、事故が起きた日のフラッシュバックに苦しめられるようになり、近所の人々と話をすることもできなくなった。次第に買い物に行くことさえ困難に、そして一家は住み慣れた地域を離れ、遠くの地方に転居したのだ。
 
 自転は保険加入が義務ではないことから、任意保険に加入していなければ、加害者は高額な損害賠償額を負担することになる。

 平成25年7月4日、神戸地裁の判決では、自転で60代の女性に正面衝突し、重傷を負わせた11歳の少年の親権者に、約9500万円の損害賠償請求額が認められている。こうした判決を受けて、自転購入にあたって保険加入を義務付ける条例が各地で制定されるようになった。子どもがいる家庭では、トラブルに備えて、個人賠償保険に加入しておくことを勧めたい。