“出禁”になった名司会者

 ほかには、山田孝之のようなケースも。出世作でもある朝ドラ『ちゅらさん』の続編『ちゅらさん4』に出演しなかったことで、NHKともしばらく疎遠になってしまったと報じられている。

 また、民放にとって何より大事な相手を怒らせたのが、乱一世だ。『トゥナイト2』(テレビ朝日系)のレポーターとして活躍していたが、自分のコーナーを控えたCM前にこんな失言。

「親戚に電話するなり、ビデオをセッティングするなり、トイレに行きたい人は行ってもいいですよ」

 CMを見てもらうために大金を投入しているスポンサーとしては、たまったものではない。このひと言で仕事を干され、2年半、ほぼ無収入になったという。

 また、政治的言動も鬼門。古いところでは1973年、昭和の名司会者・前田武彦が『夜のヒットスタジオ』(フジテレビ系)での「共産党バンザイ」騒動でテレビ全体から出禁を食らった。これは選挙で応援演説した候補者が当選したら「バンザイ」をするという公約を実行したというものだ。

 9年後、前田はTBS系の早朝番組で『お天気おじさん』としてひっそりと復帰した。

 最近では、東日本大震災を機に反原発運動に目覚めた山本太郎がこのパターンだ。そのせいで決まっていたドラマを降ろされたことなどをツイッターで暴露した。

 著書では、こんな分析もしている。

「電力会社というのは、あらゆるスポンサーの中でいちばんメディアにお金を使っている会社だし、東芝とか日立みたいに、発電所のプラントも造りつつ家電も出している企業まで入れると、その影響力は計り知れない。(略)そこに異を唱えれば、原子力がどうしたこうしたって話以前に、自分が締め出されていくことも目に見えている」

 その後、所属事務所を辞めて、現在は政治家として活動中だ。

 出禁はもっぱら、テレビと芸能人の不和や行き違いから生じるが、視聴者が見たいものを見られなくなるという弊害ももたらされる。

 ただし、出禁エピソードが面白いのは、それが生活やメンツをかけたケンカだからでもあるのだ─。

宝泉薫(ほうせん・かおる)……アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追