日本相撲協会の定款には「年寄名跡 相撲部屋規定第3条第2項」に「日本国籍を有する者に限る」という項目があり、親方になるには、日本国籍でないとなれない。11月末現在で日本国籍を取得していない(数年前に申請済みといわれている)鶴竜は、このまま引退した場合は親方になれないのだ。ちなみに白鵬は日本国籍を取得している。

 鶴竜は現在、力士会の会長である。優勝6回、多くの力士たちに尊敬される存在だ。彼が日本国籍なら、問題なく親方になれるだろう。

 それを阻む、親方国籍問題。

昭和51年の新聞記事がヘイトスピーチそのもの

 これまで論考がされなかったわけではないが、ほとんどなかった。私の記憶にあるものでは、2019年7月27日付の毎日新聞にある。そこでの論点は、

《組織(日本相撲協会)の目的が日本の伝統文化を維持・継承である以上、やはり日本の歴史や伝統を十分に理解し、肌感覚として身につけた者でないと、任務をまっとうするのは難しいだろう》(櫟原利明氏)

 とか、

相撲協会は保守的に、リスクを回避しながら運営することによって「失敗しないことで成功している」団体だと言える。ゆっくり変わっていく組織だ。外国人親方はいずれ認められるだろうが、時間をかけていくことになるだろう》(武藤泰明氏)

 と、親方の国籍を日本に限定しているのは妥当だというものだった。

 ひとつ指摘したいのは、日本国籍を有していない力士は帰化すれば親方になることが可能だが、帰化したとたんに「肌感覚として身につけ」られるのだろうか? 国籍さえ変えれば、日本の歴史や伝統を十分に理解するのだろうか? ここですでに主張は破綻しているのだが、実はこのルールが生まれたいきさつも、疑問を呈さずにいられないものだ。

 この、“日本国籍でないと親方になれないルール”は、昭和51年9月3日の理事会で決定された。そのことを報じる当時の朝日新聞と日本経済新聞の記事を今回、図書館で見つけて読み、その決議も、さらに記事そのものがヘイトスピーチそのものと感じられ、言葉の暴力に私はその場で泣いてしまった。

 朝日新聞(昭和51年9月4日付)のタイトルはこうだ。

「柔道の二の舞いご免 外人親方はダメ 国技防衛は新規則」

 タイトルだけで今ならピーッと笛が鳴る。そして記事は書く。

《この新規則は、いわば国技相撲の“乗っ取られ防止策”。最近の大相撲は国際化の一途をたどり、トンガ、ハワイ、韓国などから力士志願者が目立ってふえ出した。モンゴルから来日といったニュースも出始めているので(中略)国際化が進むにつれて今後どんな問題が起こるかもしれないため、国技の体質を守るために「日本人」の資格を定め、その歯止めとした》

 ひどい……。この「乗っ取られ防止」という言葉は、日経(同日付)にも《外人に財団法人としての国技大相撲を乗っ取られまいとする布石としたいという考えのようだ》とあるので、理事会で、または理事の誰かからこの発言があったか、少なくとも共有の認識としてあったわけだ。