「乳児遺棄事件」が後を絶たない。生い立ちや友達関係など、彼女たちが赤ちゃんを遺棄した背景にはいったい何があるのだろうか。「加害者」となった本人、そしてその家族が語ったこととはーー。凶悪事件も含め、200件以上の殺人事件などの「加害者家族」を支援してきたNPO法人World Open Heartの理事長・阿部恭子さんが、レポートする。

 東京港区の公園でうまれたばかりの赤ちゃんの遺体が発見された事件で、先月、23歳の元大学生の女性が逮捕された。女性は地方の大学に在籍しており、就職活動のため上京していた際に羽田空港のトイレで出産。赤ちゃんが泣き止まず、首を絞めたと供述しているという。
 
 本件のような乳児遺棄事件は度々起きているが、過去に「加害者」となった女性たちの生育歴から事件の背景に迫ってみたい。

女友達ができなかった

 会社員の絵美(仮名・19歳)は、勤務先近くの公共トイレで出産し遺体を自宅近くの山林に遺棄して逮捕された。

 絵美には軽度の知的障がいがあった。学校の成績は常に最下位だったが、特に問題を起こす子どもではなかった。中学卒業後、親族が経営する会社に勤務。

 絵美の姉は、成績優秀で、地元ではなく私立の学校に通い有名大学を卒業していた。姉は幼い頃から塾や習い事で忙しく、妹と遊んだ記憶はないという。妹について、親の言いつけはきちんと守る子どもだったと話す。露出の多い服装や厚化粧はせず、早めに帰宅して家事手伝いをしていた。そんな絵美は、両親や姉にとって、家庭では「いい子」だった。

 しかし、地域の人々の印象は違う。

「あの子は小さいときからいつも男の子と一緒。どこにでもついていくって、噂でしたよ」

 絵美は犯行後、妊娠や出産について相談できる人がいなかったのかという質問に、

「女の子の友達がいなかった」

 と話していた。絵美は感情を言語化することが苦手である。ストレートすぎる表現しかできず誤解を生むことも多く、女の子同士の仲間には入ることができなかったという。

 男性と一緒にいるほうがラクだと感じ、いつの間にかセックスはコミュニケーションのひとつに。妊娠も初めてではない。以前は、相手の男性が中絶費用を負担したという。しかも、今回の妊娠は、父親の可能性がある男性はひとりではなかった。それゆえ、男性に相談することもできなかったのだ。

 絵美は、会社でも友達はなく孤立していた。妊娠による体形や体調の変化に、同居していた家族は気が付かなかったのか。

「ちょうどその頃はお姉ちゃんの結婚が決まったばかりで、お姉ちゃんのほうにばかり気が向いて……」

 泣きながら後悔する絵美の両親。しかし、親の意識が姉にばかり集中し、絵美に無関心なのは幼い頃からだった。きょうだいに対する家庭での差別的な対応は、少なからず事件に影響を与えている。

 事件によって、姉の結婚は破談となった。