彼は逃げ出したわけではない

 五代のセリフに「勇敢に戦って敗れた国はまた起き上がれるが、逃げ出した国に未来はない」というものがある。これほど作品を愛した彼が、はたして“逃げ出す”だろうか?

「そうですね。本当のことはわからない。ただ、ひとつだけ思う。決して彼は逃げ出したわけではないと。春馬くんはこのスクリーンの中で勇敢に戦っているし、ここに生きている。その証を、爪痕を残してくれていた」

 春馬さんが完成した作品を見ることはかなわなかったが、一部、見ることができた。

「ラストの会議場のシーンのアフレコで、1日来てもらったんですね。そのシーンを見せたら、本当に意外だったんですけど。フッと立って、チラッと僕のほうを見て“いやあ、いろいろ思い出すな~”って涙を流していたんです。“いやあ、感動する。俺、頑張ったんですよ、なんかこれだけで泣けちゃうな”って。それが彼と会った最後になりました

 今、世界は混迷の渦中にいる。夢のある未来のため、清く正しく美しく、日本人らしく。みんなで力を合わせて進むんだ、三浦春馬さんがそう伝えてくれているように思えてならない。

・撮影エピソード

「遊女のはる(森川葵)を背負って海を見に行き泣くシーンも印象的でした。春馬くん、リハーサルのときもずーっとはるをおぶったままなんです。はるの芝居の打ち合わせをしていても、おぶったままで。「下ろしたほうがいいんじゃないの、疲れるぞ」って言っても「大丈夫です、はるを背中に感じていたいんです」って。「このあと春馬くんの気持ちの流れ撮っていくけど大丈夫?」って言っても「大丈夫です」。結果、一発OKですからね。すごい集中力ですよ

坂本龍馬役の三浦翔平とはプライベートでも親友同士で息の合った演技を見せた
(C)2020「五代友厚」製作委員会
坂本龍馬役の三浦翔平とはプライベートでも親友同士で息の合った演技を見せた
(C)2020「五代友厚」製作委員会

『天外者』
2020年12月11日(金)より
TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

取材・文/原田早知