もうひとりの「元SMAP」森の活躍に……

 ところが、11月、サプライズな出来事が起きた。24年前にSMAPを脱退してオートレーサーになった「究極の体育系」森且行の日本選手権初優勝だ。これを祝して、新しい地図の3人も、中居も木村もコメントを発表。木村の言葉は、

それぞれの選んだ道で、それぞれがつかむもの。今後も健闘を祈ります

 という短いものだったが、それでも画期的なことだ。ジャニーズは森の決断をよしとせず、10年以上にわたってメディアで彼の話や映像を出すことを禁じるなどしてきた。木村としては精一杯の祝意の表明だったのだろう。

 ちなみに、森はCDデビューから5年弱で脱退したが、その果たした役割は大きい。たとえば、SMAPというグループ名は「Sports Music Assemble People」を略したもので「スポーツと音楽を融合させる人々」という意味がこめられている。その両方において、最も優れていたのが森だったのだ。

 その能力はSMAPの出世番組『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)でも発揮されたし、さらに彼は料理も得意だった。これが『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)のビストロコーナー誕生につながるわけだ。いわば、なんでもこなせるアイドルグループ・SMAPの源流を作ったのが森だったのである。

 そんな森がいた時代のSMAPで思い出すのが、チーマーとのケンカ事件だ。'09年に放送された『SMAP☆がんばりますっ!!』(テレビ朝日系)によれば、車での移動中、チーマーたちに絡まれるトラブルが発生。森が先頭に立って小競り合いになったものの、稲垣だけは車内にこもり、一部始終をメモしていたという。

 いかにも「究極の文化系」稲垣らしい話だが──。じつは冒頭に紹介した舞台の公開稽古の日、彼は取材陣から「今年を漢字一文字で表すとしたら?」と聞かれ「森!」と答えた。

元、一緒に頑張っていた森くんが優勝したことがうれしかったですね

 というのが、その理由だ。

 そう、いろいろあったとはいえ、文化系と体育系とか関係なしに、稲垣と森、いや、元SMAPの6人はつながっているのだ。

 森もいずれはレースを引退するだろうし、5人の置かれた状況だって変わっていく。もしかしたら、5人はもとより、6人のSMAPだっていつかまた見られる日が来るのでは ──。

 そんな期待も抱かせる、元SMAPたちの2020年だった。

PROFILE●宝泉 薫(ほうせん・かおる)●作家・芸能評論家。テレビ、映画、ダイエットなどをテーマに執筆。近著に『平成の死』(ベストセラーズ)、『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『あのアイドルがなぜヌードに』(文藝春秋)などがある。