そこには現実とエンターテインメントが同一視されていないと堺屋氏は話す。

「泥棒(窃盗)を稼業とする『ルパン三世』は定番のエンタメ作品であり、極道の世界で同じく犯罪行為である殺人が平然と行われる『アウトレイジ』も大人気でした。視聴者はきちんと現実とエンタメを切り分けて楽しんおり、ダメなこととわかっている“不倫”がドラマの題材でも人気を集めることは不思議なことではありません」

不倫に対する深層心理

 とはいえ、不倫バッシングが強まる現代。不倫を否定する人間の心理についてどういったものなのだろうか。

不倫を否定する心理として、A【心の底から不倫に嫌悪感があるタイプ】、B【世間でよくないこととされているから、いけないと思っているタイプ】の2種類に分けられます。

 Aは“不倫=心の殺人”と強い意志を持っている方でしょうが、Bの中には“倫理上よろしくない行為”という世間の流れがストッパーになり、自制しているだけという人もいるでしょう。Aの声が大きいから、世の中全体が不倫への拒否反応が強いように感じますが、実は不倫に極端な拒否反応を示している人はそれほど多くないのかもしれません」

 と分析する堺屋氏。エンターテイメントとしてみる不倫ドラマは「禁断」「純愛」といったキラーフレーズを打ち出すことで、深層心理を刺激しているのだという。

“やってはいけないこと”とされている禁断行為に憧れて、禁忌を犯してみたくなるのも人間心理。“そのボタンを押してはいけない”と言われたら、ボタンを押したくなるものです。

 結婚するとよくも悪くもその後の人生のレールが大方決まったように感じ、もう恋愛はできないと思う人も少なくありません。でも当然ですが、いくつになっても恋愛に憧れる心は消えないのです。その結果、“身近に起こり得るファンタジー”である不倫モノの作品に惹かれる人が多いのだと思います」

 もちろん不倫は、された側だけでなく夫婦を取り巻く家族や友人も深く傷つけてしまう。うかつに手を出して全てを失うこともある“禁断の果実”は、ドラマで楽しむほうがよさそうだ。

お話を聞いたのは……●堺屋大地(さかいや・だいち)●恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー、恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』(扶桑社)、『スゴ得』(docomo)、『IN LIFE』(楽天)などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』(文藝春秋)、『日刊SPA!』(扶桑社)、『Business Journal』(サイゾー)などに寄稿している。LINE公式サービス『トークCARE』では、恋愛カウンセラーとして年間1000件以上の相談を受けている(2018年6月度/カウンセラー1位)。
●苫とり子●1995年、岡山県生まれ。東京在住。IT企業でOLを務めた後にフリーライターに転身。「Real Sound」「AM(アム)」「Recgame」「アーバンライフメトロ」などに、エンタメ系コラムやインタビュー記事、イベントレポート等を寄稿している。