昨年春頃の、これらの放送がまったく役に立たなかったとは思わない。

 この時期の放送内容で新型コロナへの「向き合い方」を理解していった視聴者も多かったことだろう。

 一方で、一連のコロナ報道によって別の大きな問題もあらわになってきた。

 それは、視聴者の「分断」である。

 午前中の情報番組・ワイドショーを見ているのは、在宅の女性と高齢者がメインである。

 とくに高齢者にとっては、コロナウイルス感染による死亡率が高いため、「怖い」という感情が強い。

 それゆえに「感染者数は今後どうなる」「医療体制は大丈夫か」という情報を追い求める。彼らにとっては「自らの命」が心配で仕方がないのだ。

 政府や都道府県などの「お上」に対しても、感染への対応を強く求めていくようになる。

高齢視聴者が多い番組ほど不安に応えるように

 そこで多くの高齢者に見られているテレビ番組は、そんな高齢者の「不安」に応えるような番組作りを行っていく。

 高齢視聴者が多い番組ほど、その“期待”に応えている。「このままだと感染者激増」「医療崩壊の危機」「PCR検査をなぜ受けられないのか」と、高齢者の不安を“代弁”するような形の放送を行っていく。

「試聴者のみなさん、不安ですよね。検査受けられないのはオカシイですよね」

「出歩いたりすると感染者数が増えて、医療が崩壊します」

「年配の方は感染したら即、命が危ないです。でもこれだけ若い人は遊んでいます」

「それなのに政府は何をやっているのでしょう?」

 視聴者の心理は不思議なもので自らの「不安」を形にして放送してくれると、それを見ることで「みんな一緒で、みんな不安なんだ」と安心(?)するようなところがある。

 テレビによる一種の「共感力」なのであろう。

 検査体制の不備や、政府の対応などは、もちろん批判をされて当然である。

 その一方で高齢者をターゲットにしたテレビ番組が、コロナへの恐怖を結果的に“あおった”側面は否定できないだろう。