長瀬らしい“素直さ”や“一途さ”

 これ以降、5年タームで宮藤作品の主演を続けている。映画『真夜中の弥次さん喜多さん』('05年)では同性愛者、ドラマ『タイガー&ドラゴン』('05年・TBS系)ではヤクザ兼落語家、ドラマ『うぬぼれ刑事』('10年・TBS系)では刑事、映画『TOO YOUNG TO DIE! 若くして死ぬ』('16年)では地獄の鬼と、人間以外の役柄も演じて振り幅の広さを見せる。

 吉田さんは最も好きな長瀬作品に『うぬぼれ刑事』を挙げる。

「“やさぐれているが目はきれい”“男性ホルモンは多そうなのに俺様感や、やらかし感がない”“女性に頭が上がらない、というか最低限の敬意をしっかりもっている”などなど、長瀬のイメージはいろいろですが、『うぬぼれ刑事』こそ彼そのもの。家まで買っておきながら婚約者に逃げられ、惚れっぽいために容疑者の女性に毎回恋をしてしまうという刑事の役でしたが、そのバカバカしさの中に一途さがあり、“純愛ドラマ”だったと信じています」(吉田さん)

『タイガー&ドラゴン』や、脚本家・岡田惠和が長瀬のために書き下ろしたドラマ『泣くな、はらちゃん』('13年・日本テレビ系)でも、その“らしさ”が爆発しているという。

「『タイガー&ドラゴン』は落語に魅せられたヤクザを演じましたが、落語家(西田敏行)を脅迫して落語を教わるという“素直さ”や“一途さ”がありました。反社会的な人間でありながら“人として大事な部分”をちゃんと持ち合わせている“優しさ”も伝わる。魅力的なクズだったと思います。

『泣くな、はらちゃん』は漫画のキャラクターが現実の世界に飛び出してきて、作者である生身の女性に恋をするというファンタジーですが、その設定が長瀬にぴったりで。要するに純粋で常識のないキャラクターなので、そのおかしさもあるし、一途に恋をする姿というのも“長瀬っぽさ”全開なわけです」(吉田さん)

一生懸命やって「笑われてる」ほうがいい

『TOO YOUNG TO DIE!』では地獄の赤鬼でバンド・地獄図(ヘルズ)のボーカル&ギターのキラーKを演じたが、KISSよろしく全顔を真っ赤にペイントし、牙をつけて奇抜な衣装……ともはやジャニーズアイドルの面影は一切ない。こんな規格外のキャラクターを違和感なく演じてしまうのが長瀬のすごいところ。宮藤はインタビューで《どんな無理な設定でも、絶対面白くしてくれる》と俳優として絶大な信頼を寄せていることを明かしている。

 対して、長瀬は振りきれた演技をする理由をインタビューでこう語っている。

《僕がやる手だてっていうのはギリギリまでやるっていう、それしかなくて。それが『どうすれば一番伝わるか』ってことに対する僕の答えなんですよね》(『CUT』'05年4月号)

 コミカルなセリフの間や言い回しなど、笑いに対する“勘のよさ”も抜群だが、長瀬は自分が前に出てガシガシ笑いをとる、というスタンスとも違う。

《『人を笑わせてやる』みたいなのはヤなんですよね。自分がすっげえバカなこと一生懸命やって『笑われてる』ほうがいい。そうするとすっげえ自分もワクワクしてくる》(同上)

 常にエンジン全開で、車体が壊れそうになるほどフルスピードで走りきる。それが長瀬の俳優としての流儀なのだろう。