すこし冷静になって考えれば、いやでも気づく。自分にはひとより秀でたものなんてなにもなかった。ちいさいころから、勉強やスポーツがまったくできないわけじゃなかった。学校での人間関係もそこそこうまくこなせるほうだった。いやむしろ、「クラスの人気者」的なポジションにいる時期のほうが、どちらかといえば長かった。なのだけど、ぼくの決定的な弱点は、

「これだけはひとに負けない!」

「だれよりもこのことが好き!」

 と言えるような、強い情熱を傾ける対象を見つけられたためしがないことだ。いつだって、すべてが「そこそこ」だった。

 なにか大きいことをやるひとは、だれにも負けない強い気持ちや、「熱」を持っているものじゃないか? そういうのが自分には欠けているってことは、ぼく自身いちばんよくわかっていた。

あっちゃんについていこう

 そんなぼくが、デカいことをするにはどうすればいいのか。自分の内側をいくら探しても、圧倒的に情熱を傾けたくなるなにかは見つかりそうにない。ならば、手っ取り早くひとの力を借りるしかないじゃないか。

 だれだって、ひとと仲良くしたり協力するのはいいことだと、ちいさいころから教えられて育つはず。だったら自分の力じゃなくって、ひとに頼ってなにかを成そうとすることも、きっと悪くはない。

 じゃあ、だれに頼るのか。そのときのぼくには、もちろんあっちゃんしかいなかった。

 このひとの言うことなら、聞ける。このひとに頼ろう。くっついていけば、自分ひとりじゃ決して見られない光景をきっと見せてくれる。

 そう信じさせる雰囲気があっちゃんにはあった。自分の人生を自分で切り開こうとする熱量みたいなものが、圧倒的だった。20歳そこそこのやつらなんてたいてい、不安、期待、絶望、すべての感情が入り混じったモヤモヤを抱え込んだまま、どうしたらいいかわからず立ちすくんでいる。具体的な行動なんてそうそう起こせやしない。

 でもあっちゃんは違った。同い年なのに、本当にスゴいなあ。単純に、素直に、そう思わせられた。のちにぼくらがオリエンタルラジオとしてデビューして、出世ネタ「武勇伝」で何千回と繰り返すことになるフレーズは、このころからずっとぼくの頭のなかで鳴っていたのだ。

「あっちゃん、カッコいい~!」

 って。