こんなひとと出会えたことを、全力で喜ぼう。そして同時に、言葉は悪いが大いに利用させてもらおう。そう考えていた。あっちゃんと同じ未来を思い描いて歩いていくのは大変そうだ。実際にぼくは、その初日から音を上げたくなった。

 でも一緒にいれば間違いなく、上昇気流に乗せてもらえそうだ。そんな打算も働いていた。

 自分の将来のことだろうに、ひとに頼ってばかりでどうするんだ? 若いうちからそんなふらふらした態度でどうする! そういう声はごもっともなんだけど、ここはひとつだけ反論したい。

 ぼくだって、みだりに自分の運命を、ひとに預けたりはしない。相手の見定めはちゃんとしているつもりだ。このひとになら乗っかりたい、信頼できそうだし、意志・能力・気力もじゅうぶんにありそうだから、と。

 つまりぼくは、あっちゃんなら絶対にだいじょうぶだと踏んで、あっちゃんを選んだ。このひとの言うことなら、聞ける。つらくていろいろ文句を言ってしまうこともあるかもしれないけれど、きっといい方向に進んでいくはず。心からそう思えた。信じられるひとを自分でしっかり選んだのなら、あとは相手の姿を見失わないようにしっかりついていく。そんな生き方があったっていいじゃないか。

 だれもが先頭を歩こうとする必要なんてないのだ。

「自分から道をかき分けようとはしないのか? ひと任せで本当にいいのか?」

 と問われたら、もちろんそれでいいんだと、ぼくは答えたい。そんなところで自分のちっぽけなプライドを通す必要なんてない。それよりも、一緒に歩くひとをこの目で選び、道を照らしてもらいながら、ともに楽しく歩いていく。そっちのほうがぼくにはずっと大切だし、そういう生き方のほうが性に合っていたのだ。

ミーハー中のミーハー

 そうやって、あっちゃんという格好の導き手を得て、ぼくはお笑いの道に踏み込んだ。

 アルバイトを終えるとぼくらは決まって元住吉のいつもの公園に出かけていき、来る日も来る日も漫才の稽古に明け暮れた。