60歳で家庭「解散」!

 西さんは60歳を迎えた節目で、家族に「解散」を宣言したという。

「私も還暦になったので、これからは家族それぞれが自分の好きなスタイルで生きていきましょう」

 子どもたちは家を出て、夫は実父の介護のため、出身地の三重県へ。西さんは東京のマンションでひとり暮らしを始めた。毎月2週間ほど、夫は西さんの会社の経理を見るために上京し、西さんも仕事が空けば三重に出向いた。

「1週間、田舎に行って主人と農作業をして一緒に東京に帰るという生活。でも、楽しかったですよ、まるでデートするみたいで(笑)」

 次男が生まれたときにバブルが弾け、仕事が縮小した夫は子育てや家事を引き受け、西さんを支えてきた。そんな夫が先だったのは2019年秋のこと。スキルス性の肺がん、66歳という若さだった。

「夫には、本当に感謝しかありません。おしゃべりで喜怒哀楽が激しい私とは対照的に、寡黙で性格的にも穏やかな人でした」

 西さんが仕事で怒りに震えて帰ってきても、「まあ、それはしかたないじゃないの」となだめてくれる夫。そう言われると、「そうだね。じゃあ、ご飯でも食べようか」と自然と心が落ち着いたという。

 息子たちの目にはどう映ったのだろうか。次男の涼太さん(36)が言う。

「母は自由気ままな人ですね。保育園や学校の行事、サッカーの試合などに母が来てくれた記憶があまりなくて。

 そして本当に服が好きな人。小さいころ、出かける前にコーディネートをチェックしていろいろアドバイスしてくれました。基本的な型(ルール)なども教えてくれましたね」