「困っている人を助けたいんです」

 それが、無料低額宿泊所Dからの誘いだった。聞けば、借金を帳消しにする手続きをしてくれて、施設で暮らせるのだという。追い詰められていたCさんは、いまの生活から逃げたい一心で、施設に行くことにした。Dが2億円を脱税したとして所得税法違反に問われたこともある悪質な事業者だということも知らずに……。Cさんは自己破産を申請、免責処分となり、生活保護を受けることになる。

事業者がやっていることは福祉ではなく、搾取

「僕も路上経験があるからわかるのですが」と、生活困窮者支援団体であるNPO法人『ほっとプラス』(さいたま市)の高野昭博生活相談員は語る。高野さんは介護離職をきっかけに困窮するようになり、3か月の路上生活を経験している。

「朝4時から2人組でスカウトマンが来ますからね。“住むところがあるよ。食べるところがあるよ”と誘ってくるのです」

 大手事業者Eのホームページには、「路上へのアウトリーチ」という言葉を使い、これらのスカウト活動を福祉的な支援であるかのようにすり替えている。
(※アウトリーチ……ひきこもりの訪問支援など、自ら援助にアクセスできない当事者に対し、支援につながるよう積極的に働きかける取り組みのこと)

 しかし、彼らがやっていることは福祉ではなく、搾取だ。

ごく一般的なマンションに見える無料低額宿泊所
ごく一般的なマンションに見える無料低額宿泊所
【写真】Aさんが入所した施設Bの3畳の個室と不衛生すぎる屋外トイレ

 高野さんに無料低額宿泊所を案内してもらう道すがら、川口オートレース場を通り過ぎようとしたときのことだった。

「ここにも、スカウトマンがやってきます。ホームレスがよく来ますからね。車券を買うわけではないのですが、休憩エリアがあって、コーヒーも無料で飲めるんです」と、高野さんが教えてくれる。

 こうして行き場のなさそうな人間は、無料低額宿泊所のスカウトマンの格好の餌食になるのだ。

 なかには、路上と無料低額宿泊所を行ったり来たりする人もいる。劣悪な環境に耐え切れず施設を飛び出して路上生活を送っていても、冬になると寒さに耐えられなくなり、無料低額宿泊所に一時的に避難する。そして暖かくなるとまた路上に戻る。

 路上に逃げ出すと、また別の施設のスカウトマンから声をかけられることもある。

「そのような経験をしていると人間不信になるんですね。僕らが夜回りに行って、健康状態を聞いたり、生活保護を受けてアパートに住む道筋などを話したりしても信用してくれない。“どうせ、あいつらと同じだろう”と言われてしまいます」