ゴゴスマにあって、ミヤネ屋にないもの

 では、『ゴゴスマ』の生活者目線とは具体的に何か。日テレ幹部に聞いた。

「典型的なのは天気予報。詳しくて分かりやすい。ボリュームもワイドショー全体の中で一、二を争う」

 天気予報は同局アナで気象予報士の沢朋宏氏(47)が担当している。確かに情報量が多い。かなり先の具体的な予報まで伝えるなど実用的でもある。

 日テレ幹部が『ゴゴスマ』を誉めることに違和感をおぼえる人もいるかもしれないが、『ミヤネ屋』はあくまで別会社の番組なのだ。クールに捉えている。

 日テレ関係者の同番組への見方がクールな理由はほかにもある。2012年に発覚した宮根氏個人の問題である。夫人とは別の女性との間に子どもがいることが報じられ、本人も認めた。

「ほかの芸能人らの私生活上の問題を報じる立場なので、ガクッときた」(同・日テレ幹部)

 当時は視聴率がダントツだった上、やはり別会社の問題なので、日テレは沈黙したそうだ。だが、失望感は残っているという。それは宮根氏も分かっているはずだから、関西圏での新たな戦いにも勝ちたいだろう。読売テレビのお膝元ということもある。

 関西圏で勝ちたいのは『ゴゴスマ』も同じ。新たにネット局に加わったのは毎日放送(大阪)で、これによってCMがネットセールス(ネット番組を放送する各局のCM枠をまとめてセールスする方式)に変わる見通しだからだ。CBCには大きなビジネスチャンスである。

 どういうことかというと、これまではCBCが『ゴゴスマ』という番組をネット局に販売し、CMはネット局がそれぞれ自分たちで探した。CBCにとっては大きな利益につなげにくかった。

 これがネットセールスになると、CM契約の大半はCBCが一括して行い、その契約料の総額から制作費などを引き、差額をネット局に分配する。CBCの利益率は高まる。ただし責任も重くなるので、勝たなくてはならないのだ。

 現在まで関西圏対決はどうなっているのかというと、初日の3月15日の関西地区の世帯視聴率は『ミヤネ屋』が6・8%で『ゴゴスマ』が同4・9%。その後も『ミヤネ屋』が勝ち続けている。だが、この序盤の結果を喜んでいるのは、むしろ『ゴゴスマ』ではないか。

 関東圏に乗り込んだ際のような大惨敗ではないからだ。まして関西圏は『ミヤネ屋』のホーム。この程度の差なら、将来に向けて希望が持てるはずだ。

 かたや『ミヤネ屋』はより大きく引き離したいところだろう。関東圏では圧勝と言えなくなり、東海圏は劣勢で、関西圏で敗れたり、肉薄されたりすると、日テレが再び午後のワイドショー制作に乗りだし兼ねない。その能力は十分あるのだ。

 さて、勝ち上がるのはどちらか。

高堀冬彦(放送コラムニスト、ジャーナリスト)
1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立