動画で公開されている取材の模様を抜粋する。答えているのは『ZooCheck』というカナダの野生動物保護団体メンバーだ。

成長する機会奪い、収益化

《チンパンジーの赤ちゃんがエンターテイメントに利用されているという馬鹿げた話。プリンは服を着て、自転車に乗って、ドラムを叩いて、基本的には“ちょっと面白い子”という役柄を与えられています。

 観客のみんなは笑っていて、とても面白いと思っているのですが、プリンと彼女の両親に恐ろしいことが起きていたのを知りません。プリンは動物園で生まれ、生後4日目に母親から引き離されたのです》

動物園側は、“プリンが約1500グラムという低体重で危険な状態にあったため、彼女を引き離した”と伝えていましたが、これはそれほど低体重ではありません。チンパンジーの赤ちゃんが生まれたときの体重は約1800グラムですから、赤ちゃんを母親に預けられないほど体重が少なすぎて危険だというようなことはありません》

《カドリー・ドミニオンにしても、世界中の施設や事業、ビジネスにしても、動物をエンターテインメントに使いたいときに、迅速に赤ちゃんを取り上げるということは便利なのです。なぜなら赤ちゃんの精神面、行動面が育つ前にトレーニングを行うことで、その動物を使ってお金を稼ぐことがはるかに容易になるからです。

 また、扱いやすくなるという理由だけでなく、赤ちゃんは“かわいい”のです。そのかわいさを利用し、魅力的なパフォーマンスの場を作り、収益源としている

プリンにとっては、赤ちゃんの時点で取り上げられたことでチンパンジーとして成長する機会がすべて奪われてしまいました。すべてが飼育体制やチンパンジーを使っている人たちのニーズに左右される、完全に人工的な状況になっています。

 プリンが成熟し、より大きく、より強力で危険な存在になったときに、彼女をほかのチンパンジーと同じ環境に戻そうとすると、あらゆる心理的な問題が発生し、それが彼女が本来の環境で生存することを非常に困難にさせ、彼女の残りの人生に影響を与えることになる。

 チンパンジーは45~60歳まで生きることができ、70歳代まで生きたチンパンジーもいます。その、残りの人生にダメージを与えている》

 この団体は、前述のとおり日本の政府関係者にエンターテイメント使用をやめることを訴えた要請書を送ったそうだが、返答はまだないという。取材はそれに対し、以下の言葉で結ばれていた。

《政府の関わる組織に何かを訴える際は、返事が来るまでには何週間も何か月もかかり、その返事はたいてい、“ご指摘ありがとうございます”や“検討させていただきます”というようなものです。実際に役人や部署と議論を始めようとすると、相応のプロセスが必要になります。今はただ、政府が何か対応してくれるのを待つ段階であり、それが今後の展開を決めることになるでしょう》

 不適切な動物の取扱いをしている業者への規制強化を求める活動を行う動物保護団体『PEACE』代表の東さちこさんは、日本のチンパンジーのエンターテイメント使用への反対運動が、海外でも始まったことについて次のように話す。

当然、海外から批判は出てくると思うので、驚きませんでした。国内の世論だけではなかなか変えられてこなかったので、いわゆる“外圧”もやむなしと感じます。カドリー・ドミニオンや日本テレビは、海外から日本がどう思われるかということにも気を配ってほしいです

 世界的に無くなっているチンパンジーのエンタメ使用を長年続け、“芸”を要求し続けているのが、阿蘇カドリー・ドミニオンであり、『天才!志村どうぶつ園』及び『I Loveみんなのどうぶつ園』だ。