理由は家庭用ごみと産業廃棄物との違い

 Aさんのケースをめぐる判断は後述するとして、私たちが街中でよく目にする容器回収箱に入れていいものはどう規定されているのか。

 関係しそうなのは容器包装リサイクル法。ごみを減らして資源を有効利用する目的で1995年に制定され、2008年には改正法が完全施行されている。

 環境省のリサイクル推進室の担当者はこう話す。

「容器包装リサイクル法で定めているのは家庭から排出されるごみについて。消費者には分別処理を求めています。例えば、飲み終えたペットボトル飲料は、ラベルをはがし、キャップをはずして、中をゆすぎ、つぶしてほかのごみとは区別して出していますよね。収集方法は自治体によって異なりますが、ペットボトルの空容器の回収率はけっこう高い。

 ただ、自販機横の回収ボックスやコンビニのごみ箱に捨てられた空容器については、家庭ごみではなく産業廃棄物になるので扱いが異なるんです」

 容器包装リサイクル法は、リサイクルしやすいよう消費者には分別排出を、市町村には回収を求め、製造・輸入・販売した事業者にはリサイクル義務や排出を減らす取り組みを求めるなど役割分担がはっきりしている。

 個々の飲料メーカーについて言えば、消費者が購入後に家庭に持ち帰って消費した空容器については同法上のリサイクル義務を負う。つまり義務を果たすために必要な応分の金を出している。

 空容器のリサイクルに詳しい関係者が言う。

「家庭から排出される空容器については、関連するさまざまな事業者が売り上げなどに基づき処理費用を公平に負担している。それとは別に、自販機業者やコンビニなどには商売に付随して出たごみを産業廃棄物として、リサイクルを含め適正に処理する責任があり、その費用も出さなくてはいけない。コンビニの店頭にあるごみ箱に“家庭ごみの持ち込みはご遠慮ください”などと注意書きがあるのはそのため

 販売業者からすると、客が自宅に持ち帰って消費するであろう“家庭ごみ”の分は負担済み。それなのに関係のない空容器を持ち込まれ、産業廃棄物扱いとなるごみ箱に捨てられてしまうと、家庭ごみでの役割分担であるリサイクルなどにとどまらず、分別、収集の役割まで果たさなければいけなくなる。

「百歩譲って、その店で売った商品のごみであれば、客が戻ってきて捨てられたら仕方ないかもしれないが、よそで買った商品のごみを捨てられると、運搬を含めたすべての処理費用は“完全持ち出し”になる」(同関係者)

信じられないものが捨てられている

 さて、自販機の横にある空容器回収箱に入れていいものは何なのか。飲料メーカーや販売企業などでつくる一般社団法人「全国清涼飲料連合会(全清飲)」の広報担当者は言う。

「まず、わかっていただきたいのはごみ箱ではないということ。リサイクルBOXなんです。しかし、街中の自販機横のリサイクルBOXには信じられないものが入っている。お弁当の空容器とか飲み残しのタピオカミルクティーなどを入れられると、BOXの中にネズミがいたりするんです。腐ってしまってすごい臭いを発したりもします」

 複数の関係者から聞き取った話によると、コーヒーショップなどで販売するフタ付きのテイクアウト用容器を突っ込まれたり、食べ歩きのごみやたばこの吸い殻なども入れられているという。

 実態を知るために各所で自販機横を見える範囲でチェックしたところ、氷が残っているテイクアウト用容器が無理やり押し込まれてフタが穴をふさいでいたり、ティッシュくずやたばこの空きパッケージ、おにぎりの包装フィルムなど関係のないごみだらけ。

 それどころか、BOXのそばに袋に入ったごみを置き去りにしていたり、なぜかスパム缶詰の空き容器や使い古しのスニーカーまであった。自分勝手に周辺を“ごみ捨て場”と決めつけているかのよう。スパム缶詰は鼻を近づける前から臭い、缶の中にはアリがびっしりはい回っていた。

テイクアウト用容器がリサイクルBOXの投入口に無理やり突っ込まれていた
テイクアウト用容器がリサイクルBOXの投入口に無理やり突っ込まれていた
【写真】ここはゴミ捨て場ではない
自販機横のリサイクルBOXの前に放置されたごみ袋。ここはゴミ捨て場ではない
自販機横のリサイクルBOXの前に放置されたごみ袋。ここはゴミ捨て場ではない

 再び全清飲の担当者の話。

「リサイクルBOXの中に異物を入れられるとさまざまな問題が発生します。例えば回収する空容器が異物によって汚染され、品質が悪くなる。本来、入るべき空容器が入らなくなってしまい散乱につながる。飲み残しのまま容器を入れられると、それが飲料かどうかわからず処理が難しくなります」

 その液体がガソリンや農薬などの有毒性物質を含んでいない、とは外見上からは言い切れない。ふだんエコバッグを使っていたとしても、軽はずみな行動がリサイクルを邪魔して、地球環境に負荷をかけているかもしれないのだ。