「ダメ銀行員だった」と語る千津さんは、東日本大震災を機に農業支援を行うNGOに転職。駐在先に決まったアフリカのウガンダでカラフルな布「アフリカンプリント」に心奪われ、農業ではなく、アパレル会社を起業する。子どもの養育費を稼げず自分を責めて生きていたウガンダのシングルマザー、4人の子育てを全うした母、多くの女性たちに新しい人生の彩りをもたらしたラッキーアイテムをめぐる転身物語──。

カラフルで元気の出るアフリカンプリント

「お待たせしました!」と遠くから手を振り、小柄な女性が笑顔で走ってくる。仲本千津さん(36)は、約束の時間ピッタリに風のように現れ、「準備する間、店内を見ていてくださいね」と、私たちを中に促した。

 東京・代官山の駅から徒歩5分の好立地。店舗の壁一面には、日本では珍しいカラフルで大胆な図柄のアフリカンプリントを使用したバッグや雑貨がずらりと並ぶ。『RICCI EVERYDAY』は、千津さんがアフリカのウガンダに駐在していたころに設立した会社だ。

「日本の女性って、トレンドに左右されてみんな同じようなデザインの服を着ていることが多いでしょう? 特に職場では、ベーシックな色合いじゃないと周りから浮いてしまう。でも、小さな雑貨やバッグなら自分が好きなものを取り入れやすいと思って。自分の選んだお気に入りのプリントのバッグを持つことで元気になってほしい。自分のありたい姿を見つけて、そこにまっすぐ向かっていくきっかけづくりができたらいいなと思っています」

 今年8月で創業6年、現在のラインナップはおよそ300種類。商品のほとんどは、ウガンダの首都・カンパラにある工房で作られている。 

 ウガンダは東アフリカの内陸にある赤道直下の国だが、標高が約1200メートルと高いため、日本の5月のような爽やかな気候が1年中続く。

「緑も美しく、ごはんも美味しい。とても暮らしやすい国です。ウガンダでは友人宅の一室を間借りしていて、コロナ以前は1年の半分を向こうで過ごしていました。今は行き来を制限されていますけど」

アフリカ・ウガンダでバッグや雑貨を作る現地スタッフたちと

 アフリカンプリントを生かしたバッグや雑貨を作っている現地のスタッフは21人。20人が女性で、その8割はシングルマザーだ。

 ウガンダはシングルマザーが多い。一夫多妻制で、結婚という概念も薄いのでパートナーはふらりといなくなる。働かずに昼間からギャンブルや酒に飲まれている男性も多く、家庭内でのDVも起こりやすい。養育費もない状態で子育てをしているシングルの女性は珍しくないという。

「小学校に通わずに育ったことや、仕事で十分に稼げていなかったことで子どもにひもじい思いをさせ、自分を責めるように生きてきた女性たちが、今はひとりひとりプロフェッショナルとして輝いていると感じます。そんな姿を見られることが私の原動力ですね」

 クラッチバッグや肩掛け、手持ちなど4通りの形にアレンジできる人気商品『アケロバッグ』を手に取り、千津さんは誇らしげに現地スタッフの話をする。

「持ち手の革の部分、手縫いなんですよ。すごく難しい技術で、最初は1人しかできなかったのに、それじゃあ商品作りが追いつかないからって彼女たちの間で勝手に教え合っていて。みんなまじめでモノづくりに真剣なんです」