現在、藤田さんは55歳、桑山さんは49歳。仲睦まじいご夫婦ではあるが、年を重ねるにつれ2人だけの生活で不安なこともあるはず。今、思い描いている老後の暮らしや桑山さんへの思いをうかがった。インタビューの最後に「桑山哲也の妻を生きているから幸せ」という言葉が胸に刺さった。愛と好奇心が藤田さんをいつまでも輝かせ続けている──。

着物が好きでオリジナル和装ブランド「苺壱ゑ(いちごいちえ)」のプロデュースを手がけた(撮影/近藤陽介)
着物が好きでオリジナル和装ブランド「苺壱ゑ(いちごいちえ)」のプロデュースを手がけた(撮影/近藤陽介)
【写真】撮影中、終始穏やかな藤田朋子さん

生きたいように生きることで心が穏やかに

──人生100年時代、老後についてふたりでお話されたりしますか?

結婚したときから、『今の仕事がなくなったら、路上で歌えばいいね』と冗談半分、本気半分で話しています。彼がアコーディオンを弾いて私が歌って、投げ銭をしてもらいながら暮らせばいいねって(笑)」

──そのためにも健康でいることが大切ですね。

「そうですね。新型コロナウイルスに感染したときに、人生についてけっこう考えたんですよね。軽く遺書なんかも書いたりして。『藤田朋子記念館』を建てるわけではないですから、断捨離をしようという気持ちになっています」

──もっと年を取ったら、田舎暮らしをしようとは考えていませんか?

「若い頃は主人も、地元の北海道に帰りたいって言ってたんですけど、今は全然そんな会話はしないですね。主人はシャンソンが大好きで、シャンソンの普及に尽力しているので、残りの人生をシャンソンにかけると思うんですね。

 なので私の夢、桑山朋子としての夢は、桑山と一緒にいる生活が大事なので、桑山といることがうれしいし、楽しいし、彼が幸せであることが私の幸せなんです。自分が愛してる人が幸せになるためなら頑張れるんですよ

──夫の愚痴を言う奥さんはよくいるけど、「愛してる人の幸せのために頑張れる」と言える、藤田さんが素敵です。

偽善者っぽく聞こえるから、本当に申し訳ないんですけど……。私、自分だけが幸せになることがイヤなんですよね。だから今回、みなさんにひよこ饅頭をお土産に買って来た(※前編参照)のも、自分の印象をよくしようとかじゃなくて、おいしい思いを共有したいっていう、ただそれだけなんです。

 女優・藤田朋子として死ぬまでいられるのもうれしい人生だけど、桑山の奥さんとして生きれるのもいいなあって思うんです。誰かの価値観じゃなくて、自分の生きたいように生きるのが最終的に心穏やかでいられるんだろうなって、コロナ禍の中ですごく感じました。

 だから、まわりの人に『藤田朋子って最近、見ないよね』って言われたとしても全然平気。私は“桑山哲也の妻”を生きていられたら幸せです

(取材・文/花村扶美)

●プロフィール
藤田朋子(ふじた・ともこ)/1965年8月3日、東京都出身。A型。1987年、ミュージカル『レ・ミゼラブル』で女優デビュー。翌年にはNHK連続テレビ小説『ノンちゃんの夢』で主役に大抜擢。その後、数多くのドラマや映画、舞台などで活躍。橋田寿賀子脚本の大人気ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』では、岡倉家の五女・長子役を熱演。1989年9月にはシングル『THE WOMAN IN ME』で歌手デビューも。配偶者はアコーディオン奏者の桑山哲也氏。1928年創業の和装小物メーカー「岩佐」で、バッグや草履のブランド「苺壱ゑ(いちごいちえ)」のプロデュースを手がけるなどマルチに活動。

【ホリプロオフィシャルサイト】https://www.horipro.co.jp/fujitatomoko/
【オフィシャルブログ「笑顔の種と眠る犬」】https://ameblo.jp/tomoko-fujita/
【Twitter】@tomoko_fujita
【Instagram】@chiendormant
【Instagram(着物アカウント)】@kimono15gram
【YouTube「tokoecoちゃんねる」】https://www.youtube.com/channel/UClB6phh9nAKPDdfh9vVrOkQ/

●出演情報
5月28日より、1970年代の旧ソ連に実在した「忠犬パルマ」のエピソードをもとに、犬と人間の関わりや親子の葛藤を描いた日露共同制作映画『ハチとパルマの物語』が公開される。日本からは渡辺裕之、藤田朋子らが参加。
【公式サイト】https://akita-movie.com/