セリーナ・ウィリアムズを破り、グランドスラム初優勝を果たした2018年。凱旋トーナメントでは大きな注目を集めた
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 気になる大坂の状態について、心療内科医の伊井俊貴先生にも話を聞いた。

うつ病というのは、精神的な落ち込みが2週間以上続く状態。“気分が落ち込む”程度ではなく、不思議なくらい気持ちがまったく反応しなくなり、“うれしい”“悲しい”といった感情がなくなってしまう。半年ほどの経過で症状がよくなることが多いですね。大坂選手の場合は2018年からずっとうつ病だったというより、症状があるときとそうでないときの“波”があるような状態かと思います」

うつの原因はメディア対応

 棄権を決断したのは、「このまま続けるとダメになる」とその周期を自分で予測できたからだとも。

五輪に向けて調子を整えることを目標にしていると考えた場合、現時点で無理をしないように負担を避けるのは、先を見越した正しい選択だといえます。大坂選手は、何がストレスになっているかを具体的に示したうえでその環境の改善を求め、それが叶わなかったときに初めてうつであることを告白。そして即座にそこから離れることを決断しました。今回の対応は、心理学的に見て最適なものです」(伊井先生、以下同)

 彼女が会見を拒否したことは、医学的に理解できる対応だという。

「大坂選手が何に対してストレスを感じているかが重要。彼女にとってテニスをプレーすることはストレスになっておらず、原因は記者会見やメディアへの対応だとされていますよね。“うつなのになぜプレーできるんだ”という指摘は間違っています。彼女の“会見だけやめることはできないか”という要求は何もおかしくありません」

 夢の舞台である東京五輪のため、メダルへの布石ともいえる適切な対応をとった大坂。コートへの華麗なリターンを支えるには、その決断を静かに見守るべきだろう。