仕事に関してしなくていいこと・すべきこと

 60歳で定年を迎えた場合、公的年金受給が始まるまで5年間のブランクがある。その間、男性の約8割は働き続けている。「元の会社で再雇用してもらう」というのが一般的なようだけど、はたして正解は?

【4】再雇用制度にこだわり今の会社にしがみつく→×

 定年を迎えても、本人が希望すれば65歳まで雇い続けることが企業には義務付けられている。これを会社によって「再雇用制度」「継続雇用制度」などと呼んでいる。

 妻としては、夫には定年後も再雇用制度を利用して、給料が減ったとしても元の会社に居続けてほしいと思いがち。

「でもね、私は再雇用で働くのはあまりおすすめしません。定年後も同じ会社に残ると、それまでの資格や立場を奪われ、給料も減るから、あまり面白くないんです。転職か起業を考えてみるのも一案」

 夫婦でよく話し合って、今の会社にしがみつく必要があるのかどうか、検討したいところ。

「私は人に仕えるのはこりごりだったので、定年後、起業しました。その際は、貯金や退職金、家計出費を計算して『このくらいの期間は収入なしでもなんとかなる』と妻を説得しましたね。ただ、それができたのは子どもも独立していて、住宅ローンも払い終わっていたから。定年後もそうした出費が残っていた場合は会社勤めを続けたほうが安心でしょうね」

高齢社員の配置・活躍推進にあたって生じている問題(複数回答)/(出典)日本経済団体連合会資料(2016年)
高齢社員の配置・活躍推進にあたって生じている問題(複数回答)/(出典)日本経済団体連合会資料(2016年)
【グラフ】介護にかかった費用は、準備していたより高かった?安かった?

【5】次の仕事をハローワークで探す→×

「ハローワークって、あまり親身になって相談にのってくれないケースも。今までの仕事内容について話しても会社員などは特に『それじゃこれといったスキルがないんですね』という感じで……。それよりも取引先や友人知人、親類縁者のつてやコネを使ったほうが、いい仕事が見つかる場合もあります」

【6】50歳過ぎたら“成仏”する→○

 50歳になったら、男性でも女性でも、自分が出世コースに乗っているか、そうでないかは、わかるはず。そしてたいていは出世コースからはずれているわけで……。

「がっかりすることはありません。出世していても、勝ち組でいられるのはあと10年。それよりも、60歳以降の残り人生のほうが長い。だから、私は『1日も早く“成仏”しなさい』と言いたい。“成仏”とは、会社の中での地位なんてものにこだわるのはやめて、定年後に向けて、設計図を描き準備をすることです

 でも、準備するといっても具体的に何をしたらいいのだろうか。

「今の仕事を頑張ることを大切に考えたいですね。会社の中で出世するためじゃない、自分の次の仕事、定年後の未来につなげるために頑張るんです。  頑張っていれば、同業者や取引先に名前が知られて、それが転職の足掛かりになったりすることもあります。ごく狭い範囲でいいから、『この仕事に関してはこの人だよね』と言われるような力をつけるといいと思います」

【7】専業主婦も子育てが終わったら働く→○

 ずっと専業主婦だった場合、もらえるのは老齢基礎年金のみで、最大月6万5075円(2021年度の場合)。夫の年金があるにしても、正直、心もとない。

「妻も子育てが落ち着いたら働いたほうがいいですね。106万円の壁や130万円の壁に一切こだわらず、どんどん働く!そうすれば収入も増えるし、妻も厚生年金がもらえるようになります」

 そして、老後も働き続けるのがおすすめだそう。

お金の3分法のうち、生活費は年金でなんとかなるにしても、一時出費や自己実現費を増やしたいと思いませんか? 遊んだり、美味しいものを食べたり、旅行に行ったり……。例えば夫と妻がそれぞれ5万円ずつでもいいんです。合計10万円稼げば、年間120万円。けっこう余裕が出ると思います。

 1人5万円ずつぐらいなら、パートやアルバイトで働き口が比較的簡単に見つけられますよ。そのかわり、夫も家事ができるようにしておきたいですね

〜定年前後の働き方5か条〜

一.今の会社にしがみつかない

一.転職先探しでハローワークに頼らない

一.50歳になったら出世にこだわらずセカンドライフを考える

一.今の仕事は頑張る

一.専業主婦も子育てが落ち着いたら働くことを考える