新型コロナウイルスワクチンの子どもへの接種。政府の動きが活発だ。方針では、学校での集団接種は慎重な見解を示してはいるものの、市町村の判断によっては、集団接種はありうるとしている。わが子へは打つべきか、様子見か。安心とリスクを天秤にかけ、親たちは判断を求められている〈医療ジャーナリスト/市川衛〉

 アメリカの製薬大手ファイザー社の新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省は、6月から16歳以上としている公的な予防接種の対象年齢を拡大し、12歳から15歳も対象とすることにした。

 いま話題の新型コロナウイルスワクチン、その接種可能な年齢が引き下げられている。2月に特例承認された際は16歳以上が対象だったが、海外で安全性を示すデータが出てきたことを踏まえ、この6月から12歳以上となった。

 小学6年生でも、満12歳に達していれば接種が可能となったのだ(ファイザー/ビオンテック社製ワクチンの場合。なお15歳以下が接種を受ける場合、保護者の同意が必要となる)。

 いわゆるmRNAワクチンと呼ばれる「ファイザー/ビオンテック社製ワクチン」と、「武田/モデルナ社製ワクチン」に関しては、すでに海外では生後6か月~11歳へ投与する臨床試験が始まっている。有効性や安全性が確認されれば、日本でもおそらくは時間の問題で、生後6か月以上の全世代でワクチンの接種が可能になるだろうと考えられている。

迫られる親の判断

 そこでいま、にわかに熱を帯びているのが、「新型コロナウイルスワクチン、子どもに接種すべきかどうか?」という議論だ。

6月21日から職域接種(企業や学校単位での接種)が本格的に始まっている新型コロナウイルスワクチン。河野規制改革担当大臣は「大学生に対しては、可能なかぎり夏休み中に接種を終えてほしい」と求めている

 SNSでは、医療関係者を中心に「打たせるべき」という意見が散見される一方で、新規に開発され、大規模な接種が始まって間もないワクチンに未知の副反応がないかも気になる。SNSではmRNAワクチンに関する出典不明な情報もあり、デマとは思うけれど、子どもに万が一のことが起きては……という不安の気持ちを抱くのは、親世代としては当たり前のことだろう。

 どう考えればいいのか?

 その参考として、海外の状況に目を向けてみよう。子どもへの接種に前のめりなのはアメリカ。日本より感染者数・死亡者数がはるかに多い状況が続いてきたため、国を挙げたワクチン接種への取り組みが進められている。5月10日に12〜18歳向けのワクチンが承認されてからおよそ1か月で、この年代の700万人以上が接種を受けたとされている。

 アメリカでは、いまだ感染症対策から休校している学校が多い。秋から再開を予定するところも多いのだが、シアトル・タイムズはワシントン州当局者の話として「12歳以上の子どもに関しては(学校が始まる前に)接種を受けることを強く推奨する」というコメントを紹介している。

 一方でWHO(世界保健機関)は慎重だ。明確に「現時点で子どもへの接種は推奨しない」としている。その理由として、WHOチーフ・サイエンティストのSoumyaSwaminathan博士は「子どもは感染しても重症になるリスクが非常に低い」ことを挙げている。かかっても重症化しない子どものことはまずは措(お)いておいて、高齢者やリスクの高い環境にいる医療従事者などへの接種を優先すべきというのだ。

 では日本ではどうするかを考えるうえで、筆者が重要だと思うデータがある。それは「成人世代がワクチンを広く接種した国では、ワクチン未接種の子どもの感染者も減っている」ということだ。

 例えば世界的に高い接種率で知られるイスラエル。11歳以下の子どもたちはワクチンを打っていないのに、感染者は10万人あたり546人から1.5人と、1月中旬に比べおよそ400分の1に減った。

 子どもの感染は、子ども同士が学校で広げ合っているのではなく、家庭で大人から子どもへ広げられている可能性が考えられるということだ。つまり大人がワクチンを打って感染を広げなくなれば、子どもの感染が減り、結果として学校でも流行が起きにくくなる。

 以上をまとめると、自身も親世代である筆者は、次のように考えている。日本では、現状において「子どもへの接種」について思い悩む前に、もっとやるべきことがある。