大門未知子は多くの医師の憧れ

 『白い巨塔』と並び、現役医師たちに人気なのは「私、失敗しないので」の決めゼリフでおなじみ『ドクターX~外科医・大門未知子』(テレビ朝日系)である。

「腕一本で渡り歩く医師の姿が魅力的です。現実的ではないかもしれませんが各話の結末は痛快。患者さんを思い、大人の事情に振り回されず腕を振るう姿には今でも憧れます」(円戸さん)

「『私、失敗しないので』は、私も日々つぶやいている言葉です。スキルが高く、患者さん思いで命に向き合う姿勢は医者の理想。群れを嫌う一匹狼のところもカッコいいです。クリスチャンルブタンの赤底のハイヒールで闊歩する姿は女性としても憧れですね」(大阪府堺市「小児科林医院」院長で小児科医の林かおるさん)

 フリーランスの口腔外科医として活動する長崎理佳さんは、同じフリーランスの大門未知子にシンパシーを感じているようだ。

私も自己紹介をすると『失敗しないんでしょ?』とよく言われます(笑)。ただ、あの決めゼリフは現実味がないんです。医療ミスでなければ基本的に失敗というものはないし、そもそも失敗するなんてあってはいけないことです。だけど、『失敗しない』と公言できるのはカッコいいですよね(笑)。

 あと、彼女は手術の報酬が非常に高いですが、安売りせずそれだけの価値が自分にはあると思えるということは、それだけ勉強もしているはず。フリーランスの医師として目指すところです」

 一方、リアリティーという面で多くの医師を納得させたのは山下智久主演『コード・ブルー』(フジテレビ系)だ。どこに現実味があったかというと、心理描写である。

山下智久
山下智久

「このドラマが放送されているころ、私は救急車が年間5000台来るような救急病院で働いていました。当時の私は研修医になったばかりで、救急車が来ることに怖さを感じていたほど。

 処置をしてもしなくても患者さんが亡くなることはあるし、『自分の処置は正しかったのか?』と悩むことも多かったので、自分を重ね合わせながらドラマを見ていました」(工藤さん)

「この作品あたりから『ドクターヘリ』など一般にあまり知られていなかった言葉が劇中で飛び交うようになりました。現役のドクターが監修という立場で関わっているからでしょう。事実、医者の世界でもドクターヘリの内情はそれまであまり知られていなかったですからね」(岡本さん)

 ドクターヘリという存在を周知させた『コード・ブルー』のように、あまり知られていない情報を広く普及させるという役割が医療ドラマにはある。そういう意味で岡本さんが推薦するのは、長瀬智也が主演を務めた『フラジャイル』(フジテレビ系)だ。病理医を主人公に据えたドラマである。

「僕らの世界で病理というのは本当に大切です。例えば、しこりがあるとそれががんなのかどうかの最終的な判断を下すのは病理医の仕事。

綾野剛
綾野剛

 患者さんと実際に向き合う機会はあまりないですが、“縁の下の力持ち”というより医療の根幹を担う医師です。

 私の父も病理医でしたが、初めて病理にフォーカスし、スポットライトを当てたという意味でも有意義なドラマだった。もちろん、一般の方も病理医の存在は知っておいたほうがいいと思います」

 また、リアリティーという面で『コード・ブルー』とともに名前が挙がったのは、綾野剛主演の『コウノドリ』(TBS系)だ。

「リアリティーでいえば、医療ドラマでナンバーワン。まず赤ちゃんがリアルで、どうやって生まれたての赤ちゃんをキャスティングできているのか不思議でした。  未受診妊婦や未成年の妊娠など実際にありそうな問題をうまく取り入れており、医学の不確実性が描かれているところにもリアリティーを感じました」(近藤さん)