困難を乗り越えゴールイン

 7月1日放送の『SONGS』(NHK総合)に布施明が登場した。56年間の歌手生活を振り返りつつ、73歳とは思えないパワフルな歌唱力を披露。そんな彼も65歳でシニア婚をしたひとりだ。

週刊女性がスクープとして報じたふたりの結婚。当時、週刊女性に布施は母親が亡くなったことなども告白してくれた(『週刊女性』2013年4月30日号)
週刊女性がスクープとして報じたふたりの結婚。当時、週刊女性に布施は母親が亡くなったことなども告白してくれた(『週刊女性』2013年4月30日号)
【写真】青い錠剤を手に鋭い眼差し、松居一代の配信したYouTube動画一場面

 '13年、15歳下の森川由加里(58)と結婚。スクープした週刊女性への神対応も話題になった。布施は取材に対し、

「最近になって仲間内の何人かには“そのうちします”って言ったんだけど、それにしても、君は来るのが早いね(笑)」

 と、笑顔で応じ、そのなれ初めも明かした。実は前年夏に母が病死し、その看病疲れもあってか、自身も肺炎を発症。その際、父が大腸がんで亡くなっていることからその検査も受けたところ、初期の大腸がんが見つかり、手術をしたという。

 そんな心身ともに弱っていた時期、献身的に看病して支えになったのが森川だった。音楽活動を通じて知り合った仲だが、布施は、

「いまのオレには彼女がいないとまずいんだ」

 と、大事な存在であることに気づき、結婚へと進展。なお、森川は初婚で、布施は再婚だ。

 ちなみに、前妻はハリウッド女優のオリビア・ハッセー。'80年に結婚して、長男も生まれたが、9年後に離婚した。相手が相手だけに慰謝料・養育費も高額で、しかもドル払いなため、その負担は為替相場に左右される。布施はテレビで「最近は円高なので助かる」などと語ったりしていたものだ。

 そんな最初の結婚に比べ、再婚はなんとなく地に足が着いている印象。若くて勢いのある者同士ではなく、お互いに人生経験を重ねた同士で、特に布施にとっては母の死や自身の病気を乗り越えての結婚だからだろう。

浅野ゆう子
浅野ゆう子

 同じことが、浅野ゆう子(61)のケースにもいえる。'17年のクリスマスに57歳で「同世代の一般男性」と結婚。年明けに公表して、こんなコメントをした。

「お互いこの年齢で……とも思いましたが、この年齢だからこそ、互いの健康に気遣いつつ、寄り添いながら穏やかに、これからの人生を歩んでいこうと決めました」

 この「互いの健康に気遣いつつ」という一節に、ハッとした人もいるのでは。彼女は'14年、最愛の男性に先立たれていた。昭和の名優・田宮二郎の次男で、俳優だった田宮五郎だ。

 7年ほど交際したが、田宮がくも膜下出血に倒れてからの2年間はつらい日々が続いた。母親からも病気を理由に結婚を反対されたという。この母親は、娘を宝塚歌劇団に入れるべく、スタイル向上のために正座などをさせずに育てたという、女優・浅野ゆう子の基礎をつくった人でもある。

 そんな悲しみを乗り越えての結婚。母親も今回の相手については気に入っているようだ。

「背が高うてがっちりしとってね。186cmもあるんよ。ひと目会うたときから“この人やったら”と思ってたわ

 逆に、田宮に関しては「手玉に取るような感じでね。それがアカンかった」とも。芸能人として格下の男に娘を利用されているような気持ちだったのだろうか。

 “W浅野”のひとりとして、トレンディードラマのブームを巻き起こしたゆう子。そんな人の結婚としてはいささか地味な気もするが、シニアならではの落ち着いた選択にも思える。また、57歳での結婚といっても、今の時代、先はまだまだ長いのだ。これからはむしろ、シニア婚がトレンドになっていくのかもしれない。

寄稿●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)