「優柔不断でついつい支払って、気がついたらお金がないのは私とそっくりです(笑)」

 ベストセラー小説を舞台化した『喜劇老後の資金がありません』に主演する渡辺えり

 老後資金に貯めていた1200万円が娘の派手婚、姑への仕送り、舅の葬儀費用のため目減りし、さらには夫婦そろって失職するなかで奮闘する主人公の篤子を演じる。

 誰しもが直面するいまどきのテーマは、渡辺自身も関心を寄せる。

「高齢化社会を迎えて、みんながシビアに考えないといけないことだと思います。特にコロナによって財政が赤字になって年金が少なくなったり、医療費が高くなったりするのではと心配です。

 認知症や身体が不自由になったときに入居できる介護施設の充実は必要だと思います。月15万円ぐらいのところを5万円ぐらいで提供してもらえるようになれば、預金がなくても何とかなるのではないかと。国にはそういう対策をしっかりしてもらいたいと思います。

 認知症などにならない場合は、死ぬまで働くということになるでしょうね。私は、働くにしても誰かの役に立ちたいと思います。舞台稽古の真っ最中ですが、上演したときにお客様が本当に喜んでくれないと嫌ですね。(コロナ対策で)観客数が半分の状況でも、とにかく笑わせて泣かせたいと思っています。お客様がコロナ禍で精神的な支えを持てるような役割を私たちがしていると思って、身を粉にして頑張りたいと思います」

自身の老後は78歳

 コロナは主宰する『劇団3〇〇』にも影響。“お金がない”ことに気がついた。

「あることに使おうと思って銀行から引き出そうと思ったらないことがわかったんです。そのことに1年近く気づかなくて、社長として通帳の確認をしないで、税理士さんに任せっぱなしだった私がいけないですけどね。それをきっかけに考えを変えざるをえなくなって、とにかく働こうと思っています」

 自身の老後は78歳を起点にしている。

「母親は気が利き頭の回転が速かったのですが78歳からピタッと止まりました。先輩女優さんには78歳でも舞台で長ゼリフを言いながら動きまわっている方がいれば、亡くなられた方もいて分岐点なのかなと。私もその年齢までは何とか頑張りたいですし、それ以降が老後なのかなと思っているので、それまでに(資金を)貯めたいと思っています。

 (女優業は)セリフが覚えられなくなったら終わりだと思っています。(劇団の)脚本を書いて演出もしたいけど頭が混濁したらそれもできないですから、いつまでできるのか不安はあります。78歳になっても続けられていたら、めっけもんだと思います」