福村さんの吹鼓連は、今年参加しないが、阿波おどりが開催されること自体についてはどう考えているのか。

「東京都の指針に基づいて人数や客席数を制限して開催するものであり、主催者側(高円寺阿波おどり振興協会)の考えにも賛同し、協力したい気持ちは大いにあります。

 しかし、タイミング的には今まででいちばんの(感染)拡大期に開催という最悪の状況にあたり、主催者の開催決定には賛同できても、連としては連員の命を守ることも踏まえて不参加にするのが適切と、いろいろ話し合ったうえで結論づけました」(福村さん)

実際の高円寺阿波おどりの様子('14年撮影)踊り手が通る道は、見物客で溢れかえる(写真は加工しています)
実際の高円寺阿波おどりの様子('14年撮影)踊り手が通る道は、見物客で溢れかえる(写真は加工しています)
【写真】明らかに密!実際の高円寺阿波おどりの様子

 辞退した理由は大いに理解できた。しかし、その考えのなか、“開催自体”を賛同する理由は何になるのか。

「政府や東京都の方針について賛成・反対含め、いろいろな立場の方のさまざまな意見があります。それを全部聞いていては何もできませんので、阿波おどりの開催については東京都や杉並区の指針に従って行い、あとは連ごとに連内の状況を踏まえて結論を出せばよいことと思いました。出たい連・出られる連のみで、見たい人だけがチケットを買って見ればよいのであって、反対の方は見なければいいというシンプルな考えです」(同・福村さん)

演舞中はマスクをしてはいけない

 このコロナ禍にあって高円寺駅前では酒盛りがくり広げられる。開催当日はどのような状況になるのか。

 取材を進め、阿波おどりに参加する男性に改めて話を聞くと、驚くべき“対策”が講じられていることがわかった。

「協会に対し、舞台で踊る際に、“マスクをつけさせてほしい”と話した連がいくつかあったそうです。しかし、協会の返答は、演舞中はマスクをしてはいけないというものだった。おそらく“美しくないから”ではないでしょうか。まったくよいことではないですが、百歩譲って“演舞中だけつけなくてもいい”ならわからなくもないですが、“つけちゃダメ”というのはどう考えてもおかしいと思うんですよね……」(前出・参加する連の男性)

 今年開催することや対策、またマスク着用NGの件について、主催である振興協会に問い合わせた。前提として以下の返答があった。

「今年も東京高円寺阿波おどりは(流しおどりは)中止です。事業の継続を目指して別途施設内での公演を開催する運びとなりました」

 対策についても話を聞いた。

「劇場、音楽堂等における新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドラインに基づき、策定した感染症防止マニュアルに沿った対策を講じています」

 開催自体については……。

「公演への出演にあたっては当初より各連の判断を尊重しています。各連における検討の結果として、出演を見合わせた連が一定数あるということと理解しています。今日までの過程で特定の連から開催反対の連絡を受けたことはありません」(協会役員)

 しかし、週刊女性の取材依頼への反応にあるように、反対すする人間は多い。マスクについては?

「演舞時を除く行程でのマスク着用を徹底しています。演舞時につきましても、観客席とステージとの規定距離を確保した運用のうえで、マスクおよびマウスシールドの着用有無について各連の判断に委ねております」

 週刊女性が取材した男性が受けた回答とは違う回答が返ってきたのはどういうことか。すべてを自粛しては、確かに前に進めない。しかし、それはしっかりと対策をとったうえで成り立つ話だ。阿波おどりの開催は、間近に迫っている。

 8月23日(月)、NPO法人 東京高円寺阿波おどり振興協会のサイトで8月28日(土)、29日(日)の舞台公演「2021夏 東京高円寺阿波おどり」の中止が発表された。同期間中に動画収録し、後日配信されることに。9月公演については現状発表はない。

※原稿を一部加筆しました(2021年8月23日20時05分)