番組がどんどんつまらなくなる怖さ

 1980年代、チャンバラトリオやザ・ドリフターズがハリセンやメガホンでメンバーを叩いて多くの国民を笑わせ、その後も片岡鶴太郎に稲川淳二、ダチョウ倶楽部や出川哲朗など、リアクションの面白さでブレイクした芸人やタレントは数多い。彼らの「痛みを伴う笑い」の貢献度は高いと言える。

 BPOの審議が開始されるのは9月に入ってからで、どのような結論が出るかはまだ全くわからない状態だが、テレビの現場、番組作りにに大きな影響を及ぼすことは間違いない。

「罰ゲーム、特に叩いたり蹴ったりするようなものは、すでに“なるべくやらない”ようになってきているが、何がOKで何がダメなのかの見極めがすごく難しい。そこまで自粛しなくてもよさそうなものでも、少しでも不安があると“やめておきましょうか”となってしまう。そこを見誤ると、番組がどんどんつまらなくなるという怖さがあります」

 と、バラエティーを手がける放送作家はこの流れを危惧する。さらに、このままいくとリアクション芸人の活躍の場も少なくなってしまう。

「罰を受けてリアクションを取る、という流れは確実に減ってきていますね。今後はYouTubeに活路を見出していくのではないでしょうか。でも強制的に『お前がやれ』→『嫌です』→『やれ』→『痛い痛い』はダメです。痛いと感じていない、笑いをとってますよ、というものが見せられれば大丈夫なのかなと思いますが」(同前)

 たとえポーズにしても、強制的にやらされ「痛い痛い!」という流れが笑を生んでいたわけだが、今後は面白いかは別として「やってみたい!」と、次々と挙手をする“自己申告”ならOKということか。

 その流れ、どこかで見たような……。

「そうです、ダチョウ倶楽部です(笑)。“聞いてないよー!”は今の時代のコンプライアンスにぴったりで、ダチョウ倶楽部さんは時代を先取っていたのかもしれません」(同前)

「どうぞどうぞ」が標準になる時代が、ついに到来か!?

〈取材・文/渋谷恭太郎〉