被告側に“期待”を持たせてしまった?

 裁判後に開かれた遺族側の記者会見。飯塚被告に判決が下るまで事故発生から約2年半もかかったことを振り返りながら、妻子を失った松永拓也さんは感慨深くこう語った。

「遺族に寄り添った裁判長の言葉に涙が出た。私たちの悲しみは今後も続くと思いますが、ようやくこれでひと区切りがついた。前を向いて生きていくことができる」

 飯塚被告に対しては、

「被告に権利があるというのが大前提。そのうえで、私個人の気持ちとしては無益な争いはしたくないので、できれば控訴はしてほしくない」

 だが、前出の高山弁護士は裁判が継続する可能性は高いという。なぜなら、冒頭にあるとおり、“マケた”判決になったから。判決で下る量刑は検察側による求刑の“7掛け”が多いといわれるが、

裁判所は100%検察側の証拠を認定していて、しかも自分の非を認めず無罪を主張し続けた被告に対して、求刑より2年も“マケている”。ありえないですね」(高山弁護士、以下同)

 被告側に特別な事情があれば、量刑が軽くなる場合もあるというが、

「今回は本当に見当たらない。被告の90歳という年齢や体調面を考慮したのか……通常は斟酌(しんしゃく)しないですけどね」

 この“弱腰”な判決に、

「被告側に“二審で判決をひっくり返せるかもしれない”という期待を持たせてしまったともいえますね」

 検察側もこの判決を不服として控訴する構えを見せている。被害者家族の気持ちが安らぐ日はいつになるのか。