660万人に影響の恐ろしい計画も

 厚生労働省によれば、「補足給付」の見直しの対象者は約27万人に上る。こうした介護の負担増の動きは今後、さらに強化されていく見通しだ。結城教授が政府による衝撃の計画を明かす。

「ケアマネジャーが作成するケアプランを有料化する計画が進められています。さらに、要介護1、2の人のヘルパーやデイサービスを介護保険の対象からはずして、市町村が行う地域支援事業へ移行させる案も浮上しています。来年4月から75歳以上で一定の年収がある高齢者は病院の窓口負担が2割に引き上げられますが、この対象を拡大させようとする動きも活発です。いずれも数年以内に着手するのは間違いありません」

 もしケアプランの有料化が実現すれば、660万~670万人に影響が及ぶというから恐ろしい。少しでも痛みをやわらげ、負担を軽くする方法はないものだろうか?

夫か妻のどちらかが施設に入っていて、別居している夫婦の場合、住民票の世帯を分ける『世帯分離』が可能かもしれません。夫婦で世帯を一緒にしていると、夫が会社員であれば厚生年金と妻の国民年金とを合算した金額が年収としてカウントされてしまいます。しかし世帯分離をすれば、妻は国民年金だけという人も多いでしょうから収入がガクンと下がります。すると低所得階層になるので、受けられるサービスが増えるかもしれません」(結城教授)

 介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは、こんな提案をしてくれた。

「2015年に『補足給付』に初めて預貯金額の条件がつけられたとき、遠方に住む親を介護している人たちから後悔の声をよく聞きました。みなさん口々に、“子どもである自分が介護費用を負担してきたけれど、親の預貯金が中途半端にあるから補助を受けられない。最初から親のお金を出しておけばよかった”と言うんです。今回の改正をきっかけに、普段から介護費用は親の預貯金でやりくりするよう心がけてほしいですね」

 あまり知られていないが、該当すれば介護保険料の負担を減らせる制度もある。

「障害者手帳を持っていなくても、介護保険の認定などで各自治体が定める対象に該当する人は、税法上の障害者とされ、住民税が非課税になります。すると介護保険料の負担も軽減されるんです。自治体によっては税法上の障害者に要介護4、5の人を対象としているところもあるので、最寄りの自治体に問い合わせを」(太田さん)

「利用できるサービスをタイミングよく使うことが重要」と、前出・田中さん。

介護中の家族は限界まで頑張ってしまいがち。疲労が蓄積されているのに気づかないんです。危険な状況に陥る前に、疲れたなと思ったら、ためらわずショートステイやデイサービスを利用しましょう。ケアマネでも地域包括センターの職員でもいいので、いつでも相談できる“かかりつけ相談員”をつくっておくこともおすすめです」(田中さん)