ただ、寄付の事実を有権者が簡単に確認するすべはありません。木下都議に支払われる報酬は以下の通りです。

・議員報酬81万7600円
・政務活動費50万円
・3カ月で395万2800円が支払い済
・12月には、ボーナスとして204万5022円が支払い見込み

 議員報酬は議員としての立場を失わない限り発生し続けます。政務活動費は会派「SDGs東京」の活動に対して支払われます。会派「SDGs東京」の結成の経緯などについて東京都議会に確認したところ、東京都議会議会局管理部総務課からは以下のような趣旨の回答がありました。

「議員が会派を結成する場合は、議長に会派結成届を提出することで結成されます。複数人いる会派の所属でなくなった場合には、一人会派を立ち上げるルールになっているのでそれに倣ったということになります。議員報酬も政務活動費に関しても正規の手続きを経ているので止めることはできません」

報酬引き下げに口をつぐむ政治家

 ここで、国会議員に目を向けてみましょう。日本国憲法下において、これまでに国会本会議における逮捕許諾に関する決議が議運で可決された例は20例、本会議で採決された例は18例、許諾例は16例あります。ただ、逮捕されただけでは議員資格を失うことはありません。

 また、本会議で議員辞職勧告決議が採決されたことは6例あり、うち5例が可決されましたが、いずれも「辞職拒否」となっています。過去の辞任勧告決議案は可決されても全員が「辞任拒否」をしています。民意で選ばれた政治家は簡単に辞めさせることができません。

 それでも、よく耳にするのが国会議員の歳費を減らせ(報酬を減らせ)という意見です。実際はどうなのでしょうか。政治家自らの処遇に関わる問題ですから、なかなか踏み込みません。議員が自らの首をしめるような公約には賛同できないのです。

 また、国会法では「議員は一般職の国家公務員の最高の給与額(地域手当等の手当を除く)より少なくない歳費を受ける」と規定されています(国会法第35条)。

 国家公務員の最高位といえば、事務次官を思い浮かべる人が多いでしょう。国会議員の報酬はその給与を下回ることはできません。つまり、勝手に下げることができないことが明示されているのです。

 次の衆議院選挙の投開票が10月31日に行われます。いまの政治をどのように評価するのか、1人ひとりが真剣に考えなければいけません。選挙は、私たち有権者が社会や政治へ参加するよい機会になります。


尾藤 克之(びとう かつゆき)Katsuyuki Bito
コラムニスト、明治大学客員研究員
東京都出身。議員秘書、大手コンサルティングファームで、経営・事業開発支援、組織人事問題に関する業務に従事、IT系上場企業などの役員を経て現職。現在は障害者支援団体のアスカ王国(橋本久美子会長/橋本龍太郎元首相夫人)を運営しライフワークとしている。NHK、民放のTV出演、協力多数。コラムニストとしても、「JBpress」朝日新聞「telling,」「オトナンサー」「アゴラ」「J-CASTニュース」で執筆中。『あなたの文章が劇的に変わる5つの方法』(三笠書房)、『即効! 成果が上がる 文章の技術』(明日香出版社)など著書多数。埼玉大学大学院博士課程前期修了。経営学修士、経済学修士。明治大学サービス創新研究所研究員。