《娘を助けてほしい……》

 A子さんに友人のB子さんから切羽詰まった様子で連絡が来たのは、10月31日。ハロウィンの夜だった――。

 京王線の車内で乗客が刺されるなどして十数名が重軽傷を負う事件が発生した。住所・職業不詳の服部恭太容疑者(24)が殺人未遂の疑いで現行犯逮捕された。

「放心状態で震えていた」

「容疑者は『バットマン』に登場する悪役のジョーカーのような派手なスーツとネクタイという出で立ちでした。京王八王子駅発、新宿駅行きの特急の列車内で、容疑者は刃物を振りまわした」(全国紙社会部記者)

70代の男性が胸部を刃物で刺されて重体になり、そのほか16人にケガをさせた。

「さらに容疑者は油とみられる液体をまいて火をつけています。車内のシートが焼けるなど30分近く燃えていたそうです」

 そんな騒然となった列車内に、B子さんの高校生になる娘がいた。

《うちの娘が京王線に乗っていたら、車内で事件が起きた。パニックになっている。国領駅で降りているみたいだから、娘の服装を教えるので、助けてほしい……》

服部恭太容疑者が現行犯逮捕された国領駅のホーム

 国領駅に列車が緊急停車すると、乗客は列車ドアが開かなかったため窓から次々と脱出した。A子さんはこの国領駅に隣接するタワーマンションの住民だった。B子さんは藁にも縋る思いだったのだろう。

 A子さんが慌てて外に飛び出して、B子さんの娘を探した。駅周辺はまだそれほど普段と変わりはなかった。彼女に会うのは十数年ぶり。服装を頼りに何とか探し出すことができた。

「娘さんの無事を伝えると、B子さんが“よかった”と喜んでくれました。ですが、彼女は放心状態で震えていました。彼女も停車した電車の窓から逃げ出したようです」(A子さん、以下同)