女としてうらやましいのは……

 未知子にはほぼ男の影がなく、性欲も結婚願望もストレスもなさそうだ。手術欲が異様に強いので、何か違う形で欲望を満たしているのだと思われる。家も男も家族もペットももたず、気ままに海外と日本を行ったり来たりで、かなりの自由人。

 神原名医紹介所(の岸部一徳)にどれくらいピンハネされているのかは気になるが、年収数千万円は稼いでいるに違いない。束縛されない生活、好きなことで大金を稼げるスキルに、世界中どこででも生きていけるたくましさ。実はこれが一番うらやましい。

 別の意味でうらやましいのは、なんつっても年下の男性部下から好意を寄せられるという、モテモテの衛だろう。絶世の美丈夫・町田啓太に可愛げ炸裂超ド級の赤楚衛二だよ!? もう盆暮れ正月にクリスマスとハロウィーンも同時到来みたいな、浮かれっぱなしの精神状況にならんのか? 

 社員たちからも信頼されているし、親友の中村ゆりからもうっすら恋愛感情に近い好意を寄せられている。人という宝に恵まれている衛は、経営難に陥ってはいるものの、女としても人としてもかなりうらやましい。

 最後はマリコ。土門との関係は「プラトニックな恋愛」であり、全国に多数いるどもマリファンは屋上や川っぺりのラストシーンが大好物。かつては熱血剛腕刑事だった土門と、おきゃん(死語)な研究員だったマリコも、十数年の時を経て、成熟し達観した大人の付き合いになっている。お互いに慕い合いながらも、決して触れ合うことはない。婉曲表現の言葉だけで愛を育んでいるのだ。もうここまでプラトニックだとうらやましくもなくて、歯がゆい。いけず。さすがは京都。

 今シーズンでは、第一話でマリコの元夫(渡辺いっけい)が警察庁からやってきて、マリコに異動話をもちかけてきた。東京で刑事相手に講義する指導官に推薦したいという。マリコは科捜研、京都、そして土門に別れを告げるのか!? 土門はうっすら嫉妬と不安を覚え……なんつって盛り上がったわけよ。結果的にマリコが警察の不祥事を暴いちゃったがために、異動話はなくなったけどね。

 マリコと土門は地方公務員同士、年金も多そうなので老後も安泰。そこはうらやましい。定年退職してからぜひ濃密な愛を交わしてください。

 木曜夜の3人の女たち、実は友達が少ないというのも共通項だ。全員人格者ではあるが、友達はかなり選んでいる、または不要という考えなのかもしれない。こっちが友達になりたくても友達認定してもらえないんだろうなと思いつつ、妄想をふくらませてみた。マリコ、未知子、衛――あなたは誰と仲よくなりたい? つうか誰になりたい?

吉田 潮(よしだ・うしお)
 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。『週刊フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターもたまに務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『くさらないイケメン図鑑』(河出書房新社)、『産まないことは「逃げ」ですか?』『親の介護をしないとダメですか』(KKベストセラーズ)などがある。