人知れず抱く「もとの身体には戻れない」という悩み

 婦人科がんの治療では、外見の変化にも悩まされる。乳がんで乳房を失い、大きな喪失感に襲われる人は多い。また、抗がん剤による脱毛は、まだまだ避けられない。

 その一方で、見た目でわからない後遺症や治療の副作用を、まわりに理解してもらえずに悩むケースも、実は多い。例えばがん周辺のリンパ節を切除した場合は、リンパ浮腫にならないよう生涯にわたって注意が必要だ。リンパ節を切除するとリンパ液の流れが滞り、浮腫(=むくみ)が生じやすくなる。乳がんなら腕など上半身の、子宮がんや卵巣がんでは足や下腹部など下半身が、ひどくむくんでしまうことがあるのだ。

「リンパ浮腫は歩行が困難になったり、重症感染症などでときには命にもかかわります。発症を防ぐには、誘因となるケガや虫刺され、過度の疲労などに気をつけなくてはいけません。2年以内の発症が多いといわれますが、『よつばの会』の患者さんで、術後10年後に突然発症し、片方の足がひどくむくんでしまった方がいます。患者会で“10年たっても油断しないで”と話してくれました」

 その他、手術の後遺症で排尿障害が起こることもある。なかには自己導尿が長く必要になる人もいて、鏡を見ながらカテーテルを尿道から挿入して尿を出さなくてはならず、尿意が乏しくなって時間を決めて排尿する場合もある。

 また、術後のホルモン治療や分子標的薬による維持療法などは、数年間と長期にわたることが多い。いずれも脱毛にまで至らなくても一定の副作用はあり、倦怠感や食欲不振などに悩まされ続ける人も少なくない。

「患者会でよく話に出るのは、“もとの身体には戻れない”ということ。でも、はた目には元気に見えるし、“手術をして、もう治ったんでしょ”と、悩みを理解されないことも。私も以前は、悪いところを取りさえすれば元の生活に戻れると思っていましたが、現実は違ったんです」