各局はシニア層へと舵きり

 まさにWIN-WIN。そして盤石とも言えるテレ朝と東映の関係性。

「株式上でも大きな繋がりのあるため、“一度限りのお付き合い”ではなく、じっくりと腰を据えて番組制作に臨むことができている。たとえ華々しいスタートでなかったとしても、時間をかけて作品とファンをじっくりと育てていく。その結果、多くのヒット作を生み出しているように見えます」

また他局にとっては、東映のような歴史と伝統、制作能力に長けたパートナーを持つテレ朝は、羨ましい環境に見えるだろう、と影山教授。

「そして“続編、また続編でいい商売をしてますよね”では決してないんです。好調の裏できっちりと種をまき、芽を育て続けている。攻めの姿勢を崩していません

 1月6日には『管理官キング』(主演・沢村一樹)が放送されたばかり。昨秋には『欠点だらけの刑事』(主演・小日向文世)の第2弾も放送されている。あの『相棒』も、もともとは2時間のスペシャルドラマからスタートしているのは有名な話。

 一方で、片岡鶴太郎主演の終着駅シリーズ(1990年~)はすでに37作。伊東四朗主演の『おかしな刑事』(2003年~)はシリーズ通算25作目を数えるなど、長寿スペシャルドラマも多数抱えている。

「今、若者という同じ魚ばかりを追い求めるテレビ局が複数ある中で、テレ朝はテレビ東京同様に独自の道をしっかりと突き進んでいると思います。今後、テレ朝がゴールデンだけではなく“3冠獲得”なんてことになれば、他局の目の色も変わるんじゃないですか? “F1(20歳~34歳の女性)やF2(35歳~49歳の女性)ばかりを追いかけていてはいけない”と考えるテレビ局が出てきても不思議ではないと思います。そして他局がシニア層に見てもらう番組作りへと舵を切ったとしても、テレ朝を追いかける後発。アドバンテージがないわけですから、その差を埋めるのは容易ではないでしょう」

影山貴彦 同志社女子大学学芸学部メディア創造学科教授、コラムニスト。'86年4月に毎日放送(MBS)に入社し、テレビやラジオ番組の制作、編成業務をへて現職。代表プロデュース番組に『MBSヤングタウン』。近著に『テレビドラマでわかる平成社会風俗史』(実業之日本社)