昨夏開催された東京五輪・パラリンピックの“言い出しっぺ”は石原慎太郎さんだった。当初は2016年開催を目指して招致活動を展開し、リオデジャネイロに敗れると、涙を流して悔しがった。

 国内の招致機運を高めるためならば……と、アイドルグループ・AKB48や漫画家・蛭子能収さんと一緒にオリジナル体操をしてみせるパフォーマンスもいとわなかった。

 1964年の東京五輪を会場で観戦している石原氏は、感動したシーンについてこんなふうに述べている。

「“東洋の魔女”と呼ばれたバレーボール女子日本代表が宿敵・ソ連(現ロシア)に勝って金メダルを取った瞬間、大松博文監督はすーっといなくなって、遠くから壁にもたれて選手たちが喜ぶ様子を眺めてニコニコ笑っていた。あのとき、男って美しいなと思ったね」

北島康介さんと約束した“焼き肉3年分”

 口数が少なく“鬼の大松”の異名をとる厳しい監督で、選手との距離感は、昨夏の五輪でバスケットボール女子日本代表を銀メダルに導いたトム・ホーバス監督とも、'11年のサッカー女子W杯でなでしこジャパンを優勝させた佐々木則夫監督とも異なる。

 世界で活躍する男を評価し、競泳男子金メダリストの北島康介さんの選手時代には、活躍のご褒美として「焼き肉3年分をおごる」と約束も。

「世界選手権の優勝を喜んで言い出したんですが、そもそも北島さんの実家は精肉店なのでうれしいかどうかは微妙なところ。当時控えていたアテネ五輪でも金ならば……とご褒美を3年分までつり上げた」(当時の都政担当記者)

 ところが、都民である北島さんにポケットマネーで焼き肉をおごると有権者への利益供与とみなされるため、おごりたくてもおごれない事実が発覚。それでも「約束は守ります。違うかたちであっても」などと言い張り、都民栄誉賞を贈る際に副賞を20万円増額した。