'80年代ど真ん中 アイドルの陰で吠えた人、泣かせた人、流行りに乗った人

 1980年代中盤は、アイドルの時代だ。1980年デビューの松田聖子や田原俊彦、1982年デビューの中森明菜、1985年デビューのおニャン子クラブといった顔ぶれがオリコン1位を独占した。

当時の歌番組で引っ張りだこだった面々。今聴いても、彼らの曲は色あせない魅力にあふれている
当時の歌番組で引っ張りだこだった面々。今聴いても、彼らの曲は色あせない魅力にあふれている
【写真】懐かしい!1980年代を彩った一発屋たち

 そのぶん、アイドル以外の人は一発屋になりやすい。例えば、せつない恋を歌い上げたちょっと地味な男性歌手たちである。

『想い出がいっぱい』(1983年)のH2Oに『初恋』(1983年)の村下孝蔵、『シャイニン・オン 君が哀しい』(1985年)のLOOK。『想い出が~』はアニメ『みゆき』(フジテレビ系)のエンディング曲で、彼らのデビュー第2弾はドラマ『翔んだカップル』(フジテレビ系)のエンディング曲だった。当時のラブコメブームにぴたりとハマったデュオといえる。

ドラマ主題歌が大ヒット

 これに対し、女性シンガーは吠えまくった。『ボヘミアン』(1983年)の葛城ユキに『ふられ気分でROCK'N' ROLL』(1984年)のTOM CAT『ヒーロー』(1984年)の麻倉未稀、『翼の折れたエンジェル』(1985年)の中村あゆみ。このうち『ヒーロー』はドラマ『スクール☆ウォーズ』(TBS系)の主題歌である。

王道の不倫ソング、小林明子の『恋におちて』
王道の不倫ソング、小林明子の『恋におちて』

 実はこの時期、TBSのドラマから特大の一発ヒットがいくつも生まれた。1985年には『金曜日の妻たちへ3』の主題歌『恋におちて』(小林明子)、1986年には『男女7人夏物語』の主題歌『CHA-CHA-CHA』(石井明美)、1987年には『男女7人秋物語』の主題歌『SHOW ME』(森川由加里)という具合だ。

『金妻』は不倫ドラマで『恋におちて』も不倫ソング。「土曜の夜と日曜の貴方」が欲しいとか「ダイヤル回して手を止めた」といったリアルでその時代っぽい歌詞が共感を生んだ。また、小林はのちに、カーペンターズのリチャードに「カレンに似ている」と気に入られたボーカルの持ち主。不倫ソングなのに、どこか清々しいところも支持につながったのだろう。