前科者への冷たい仕打ち

 刑務所の中で過ごした4年の間に、竹田さんは病を発症した。腹痛と出血に苦しみ刑務官に訴えたが、「詐病でしょ」と言って取り合ってもらえなかった。

 半年後、懲罰になっても構わないと思った竹田さんは、「検査しろ!」と刑務官につかみかかった。

 結果は、子宮がんで全摘出。

 帰りの車の中で泣く竹田さんを見て、刑務官は、「嫌だったら、こんなとこ来なきゃいいんだ」と吐き捨てた。

 医療刑務所に移送され、手術と治療を終えた半年後、4年の刑期を終えて出所。

 待ち受けていたのは厳しい社会の現実だった。

「地道に昼の仕事をしないと“普通の人じゃない”という感覚があって。やり直そうと思って、スーパーのレジ打ちのアルバイトを始めました。

 でも、1か月たったころ、店長から“隠していることがあるよね。前科あるでしょ。そういうのウチいらないから”と突然言われてクビになり、バイト料ももらえませんでした。

 仕事にも慣れて、顔見知りのお客さんができてきたころで……悔しかったですね。生き直そうとしても、働かせてもらえない……愕然としました」


 その後、クラブでママの仕事を始めた。水商売に戻っても、覚醒剤や犯罪には手を染めたくないとの思いで、仕事は慎重に選んだという。

 6年後、風俗店で働く女性の相談に乗る「ラブサポーター」に転身。占い師に弟子入りし、勉強も始めた。

 友人の佐野さん(仮名=53)が当時を振り返る。

「出所後に知り合ったのですが、自分のことよりも人のために何かをするとなるとすごいエネルギーが出る人でした。“仕事は人を喜ばせること。その喜びを得るチケットを私から買ってもらった。だから、私は頑張る”と言っていたことをよく覚えています」

 仕事が波に乗ってくると、竹田さんは服役中の夫と離婚。夫の詐欺事件に加担した罪を償うため、弁護士を通して弁済を申し入れた。

「ヤクザの世界では“夫に言われたことはやるのが当たり前”で、善悪の判断がつかなくなっていた。すごく後悔しています。ただ、弁済を申し出ても“気持ちが悪い”と受け取らない方もいて……。服役したから、罪を償って終わりだとは思っていません」

 新たな一歩を踏み出した矢先、摘出した子宮がんが卵巣に転移していたことが発覚。再び試練に直面する。