段階を経て少しずつ意識改革を

 働くことに同意はしても、職探しで挫折されたら妻としてはたまったものではない。夫の働く意欲をかきたて、うまく就職へとつなげるには具体的にやるべきことはなんだろう。東京しごとセンター課長の村野哲寛さんは夫婦での話し合いが大事だという。

「ご本人も就職活動なんて何十年もしたことがないわけですから、戸惑って当然、わからなくて当たり前です。まずはその状態を理解してあげること。そのうえで、ご夫婦で定年後のライフプランを整理し、いつまでいくら収入が欲しいのか、どんな働き方をしたいのかを明確にすることが第一段階です」

 妻側からすれば、「働く」か「働かないか」という二択ではなく、「働くほうがいい」という前提で話が進められると理想的。

 長年働いた夫は「定年後くらいはゆっくりさせてくれ」と思うかもしれないが、そこは、頑張りを十分ねぎらったうえで、働き続けることのよさをアピールしたい。オーバーなくらい感謝や励ましを伝えると、夫もまんざらでもないはず。

 また、自分もパートを続けたり、外で働かないなら家事は快く引き受けたりと、ともに頑張る姿勢を見せるのもポイントだ。

無料の相談やセミナーを最大限利用

 次なるステップは、ハローワークなどが開催している無料のセミナーや講習会に行ってみること。

 例えば「東京しごとセンター」では、55歳以上向けのさまざまなセミナーが無料で開催されている。再就職支援セミナーでは、履歴書の書き方から仕事の探し方など、就職活動の基礎を教えてくれる。

 再就職した人の体験談が聞ける再就職応援セミナーやシニアに求人が多い職種の内容がわかる職場転換セミナーなどもある。

 まずはどんなセミナーでもいいからとにかく行ってみることがいちばん大事。

「ちょっとのぞいてみる、ちょっと話してくる、という気ラクな気持ちで足を運んでほしいですね。本格的な職探しの前に準備運動の感覚で利用すると情報が入ってくるし、視野が広がります。

 人の話を聞いたり話したりしているうちに、自分の希望や考えも固まってくる人が多いですね。奥さまが情報を集めてさりげなく促してみるのも効果的だと思います」(内野さん)

 ひとり家にこもっていると自分の考えに固執し、不安感や孤独感がつのるばかりだが、外に出てみれば自分と同じような境遇の人がたくさんいることがわかる。