「未成年者取消権」が使えなくなる

例えば児童養護施設の場合、支援を受けられる期間は原則18歳まで。ただ、施設を退所するときは職員が賃貸アパートなどの保証人になることが多く、住まいや暮らしについて一緒に考え、サポートすることもできました。ところが18歳成人になると、自分でアパートの契約ができてしまう。職員に相談する機会が減り、困窮したり、違法スレスレの仕事に手を出してしまうかもしれない。無理な自立を迫られるおそれがあります

2022年4月1日から成人の年齢が18歳に引き下げ。これまでと変わることは…?
2022年4月1日から成人の年齢が18歳に引き下げ。これまでと変わることは…?
【写真】わかりやすく図解! 「18歳成人で何が変わる?」

 成人となる年齢の引き下げに伴い、少年法も改正される。18歳・19歳は「特定少年」という位置付けに。引き続き少年法で保護されるが、殺人や傷害致死といった一定の重さの罪を犯した場合は、原則として刑事裁判を受けることに。有罪になると、少年院ではなく刑務所で服役しなければならない。

特定少年が起訴された場合、4月から実名報道が可能になります。ただ、禁じられていたとはいえ罰則がなかったので、これまでにも少年の凶悪犯罪を実名で報じるメディアはありました。今回の法改正は厳罰化の動きといえますが、重い刑罰を科したり実名で報じたからといって、犯罪の抑止にはならないでしょう

「18歳成人」によって、とりわけ懸念されているのが、お金にまつわるトラブルだ。

「20歳の誕生日を迎えた途端、さまざまな手口で悪質業者が群がってきます。4月からは、そのターゲットが18歳に変わるわけです」

 と、前出・あんびるさん。先述したように、親がわが子の結んだ契約を取り消す未成年者取消権が使えなくなることから、トラブルの増加が懸念されている。国民生活センターでは、新成人が狙われやすいトラブルとして「副業・情報商材やマルチなどのもうけ話」、「エステや美容医療などの美容関連」、「出会い系サイトやマッチングアプリ」などの事例をホームページで紹介、注意を呼びかけている。

 あんびるさんは最近、知人のお子さんから実際に相談を受けたという。

投資に関する商材を買わされたというんです。契約を無効にして支払った代金を取り返したいというので、被害者に私が付き添って、一緒に待ち合わせ場所へ向かいました。現れたのは、30手前くらいのスーツ姿の男性。イケメンで、まじめそうな雰囲気でした」(あんびるさん、以下同)