若手に乗しかかる“王者の呪縛”

 それぞれがリフレッシュして挑み“羽生だけじゃない”ことを見せた世界選手権。新たな4年が始まる来シーズン、さらに勢いを見せていくには、何が必要か。

左上から時計回りに宇野昌磨、羽生結弦、鍵山優真(JMPA代表撮影)
左上から時計回りに宇野昌磨、羽生結弦、鍵山優真(JMPA代表撮影)
《写真》「僕も出たい、ふふふふ」2030年札幌五輪に意欲?不敵に笑う羽生結弦

「宇野選手、鍵山選手の更なる飛躍は、ここからの伸びにかかっています。今までは、勝利へのプレッシャーを羽生選手が背負ってくれたおかげで、無心で試合に挑めた部分がありました。しかし、これからはそれを自分たちで背負いながら、戦っていかなければなりません。なので、技術の向上だけでなく、どう精神的に成長していくかがいちばんのポイントとなるでしょう。宇野選手は“勝ちたい、世界一になりたい”と意識しすぎて苦労した時期もありましたから……」(折山さん)

 長年“絶対王者”といわれ続けた羽生にとって、それは“王者の呪縛”でもあっただろう。

 3月15日に95歳となった宇野の祖父、宇野藤雄さんは「昌磨は練習や試合で忙しいのでなかなか会えていませんが、世界のトップで戦うプレッシャーをかわすことのできる子です」と太鼓判を押す。

「鍵山選手や佐藤駿選手(18)や三浦選手など、同世代が競り合っている中で、少し上の世代にいる宇野選手、そこにしぶとく割り込む友野選手と今の日本男子は層が厚いです。特に宇野選手と鍵山選手には、羽生選手が一身に受けていたプレッシャーを背負っても高いレベルで戦えるようになってもらわないといけないですし、それだけの素質はある選手だと思います」(折山さん)

 日本男子フィギュアの未来は明るい!

折山淑美 '90年代初頭からフィギュアスケートを取材し、'10年代からは羽生結弦を丹念に追っている。'21年には羽生との共著『羽生結弦 未来をつくる』(集英社)を刊行