辞めジャニが陥りがちな“錯覚”

 では、どうしてこういうことになっているかというと──。“辞めジャニ”が陥りがちな錯覚が原因だろう。そもそも、アイドルというのは曖昧で不安定な存在。「人気」という実にふわっとしたものに支えられている。初期のKAT-TUNが大ヒットを連発できたのも「人気」の後押しがあればこそだ。

 まして、田口はグループのエースというわけでもなかった。「入り口、出口、田口です」という自己紹介ギャグも、硬派なイメージのグループ内でやるボケだから有効だったのだ。

 韓国公演の際には「イック(入り口)チュック(出口)タグチ(田口)ムリダ(です)」という韓国語バージョンを披露。のちに「どんずべりしましたね」と自虐して笑いをとっていた。そういうキャラだったのである。

 とはいえ、この人気と実力をめぐる錯覚を修正するのは難しい。例えば、彼は逮捕される直前、岩手県平泉の恒例行事『春の藤原まつり』に源義経役で登場。20万人もの観客を集めた。全盛期の滝沢秀明が登場した'05年の30万人には及ばなかったものの「毛越寺があれだけ人で埋め尽くされた東下り行列は久しぶり」(観光協会)と地元を喜ばせたものだ。

 つまり、ジャニーズを辞めてもそれなりに人気者ではあるのだが──。ただで有名人が見られるから集まる人たちと、カネを払って曲を買う人たちとは別モノなのである。

 ちなみに、前述の『Mステ』では中丸雄一(36)がタモリを描いたイラストを持参してトーク部分の主役になっていた。こちらは「何でもできちゃう」というより「何でもやります」的なスタンス。それがよかったのか、この春『朝だ!生です旅サラダ』(テレビ朝日系)の2代目レポーター役に選ばれた。『シューイチ』(日本テレビ系)と合わせ、土日の朝のレギュラーを獲得したわけだ。

 グループ内では似たポジションだっただけに、田口と中丸の違いは象徴的だ。辞めジャニと現役ジャニーズの間にある壁は思いのほか大きい。

PROFILE●宝泉薫(ほうせん・かおる)●アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。近著に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)