「数年前に私たちと同居していた70代の夫婦です。私含めほかの方々も1人では寂しくて、交流しながら生活したいと入居を決めました。でも、その夫婦はそうではなかった」

 健司さんのシェアハウスには単身、夫婦世帯合わせて10人以上が住んでいた。入居者は家族のように接し、家庭菜園をし、集会室のような広々とした共用のリビングで週1回、全員で夕ご飯を食べたり、誕生会もしたり。だが、その夫婦の入居理由はほかの入居者と異なっていた。

70代のおじさんと若者がトラブルに

 夫が認知症を発症したことで、第三者の見守りの目が必要だと考えた。だが、2人で老人ホームや高齢者向けの施設に入るには費用が高すぎた。そのため夫婦が選んだのは月6万円、7万円ほどの家賃で入居ができるシェアハウスだったという。

 同年代の入居者と暮らすことで夫の病状は安定し、楽しそうだった。一方、人付き合いが苦手な妻は部屋にこもりがちになり、孤立していった。

「奥さんは“自分は交流しないし畑もしないから共益費を下げろ。掃除当番もしない”とゴネ始めたんです。ほかの入居者がなだめると暴言を吐いてきて……。そのうちにある事ない事まで言いふらして派閥までつくろうとし始めました……。しまいには自分がトラブルを起こしたせいで夫がいじめられる、と被害妄想を訴えるようになってきて……このままではよくない、と退所をすすめました」

 程なくして2人は退所した。東京都に住むアユミさん(30代・仮名)は20代のころ、異年齢、男女混合のシェアハウスで暮らしていた。

「70代のおじさんと若者がトラブルになっていました。生活のリズムが違っていて、おじさんが寝ている時間に若い人は仕事から帰ってくるので、リビングで飲んだり談笑しているといつもおじさんが怒鳴り込んできていました。若い子と価値観が違うから口論になることも多くて……何言っても頭ごなしに否定してくるし、“オレの介護をしろ”とか“年配を敬え”とか言ってくるし」

 さらには誰もが避けられない問題があると満田さん。

「介護の問題です。年とともに身体の機能は低下するため入居者が寝たきりになったり、なんらかの介護が必要になることも。現在でも介護保険を利用してヘルパーに来てもらったり、デイサービスに通い始める入居者もいます」

 介護を入居者任せにすれば老老介護になり、共倒れにだってなりかねない。