合格確実とみられた早稲田大学に落ち、通っていた進学塾を手伝いながら浪人生活を送る中、

「東京でホストになる」

 と言い始めたという。

「慌てた塾長から“この子を預かってくれないか”と頼まれたのが始まり。水商売の勉強をしてから東京に行ったほうが成功するのではないか、と説得したらしい。会ってみるとイケメンだし、ニッと笑うとかわいいし、会話も上手なのでバーテンダーとして雇うことにしたんです」

 光弘容疑者との出会いをそう振り返るのは、松阪市内のオーセンティックバー『アップルパパ』のマスター(65)。

 当時、界隈で最先端をゆく大型ブリティッシュパブを営んでおり、女性客が多かったため、若い男性バーテンダーを積極的に雇っていた。

谷口光弘容疑者がホスト修業のため働いていたバーの様子(マスター提供)

「ミツ(光弘容疑者)は頭脳明晰で仕事を覚えるのが早かった。勤務態度もまじめでした。シェイカーを振るのは簡単ですが、柄の長いバースプーンで味をなじませる“ステア”が上手かった。女性客にモテて、いつも美人の彼女がいましたね」(マスター)

店の名は『サンタムール』

 約2年の修業後、腕を磨くために料理を得意とする店、カクテル専門店へと次々に移籍。20代前半でカウンターだけの小さなバー『サンタムール(仏語で聖なる愛という意味)』を地元にオープンした。

「若手バーテンダーの登竜門といわれるカクテルコンクールにも出場しています。ずいぶん客もついたので大きな店にしたり、レストランバーも経営した。飲食業に向いていたが、彼は野心家でもあった」

とマスター。

 本業の傍ら、不動産業への進出を目指し、宅地建物取引主任者の資格試験に一発で合格。現在は元妻が社長を務める不動産会社の母体を作り上げた。30歳で敷地面積約800平米、延床面積約350平米の豪邸を中古で購入。次第に売り上げの大きい不動産業に傾倒し、大金を動かすうち、一線を超えてしまう。

「虚偽の内容で金融機関に住宅ローン融資を申し込み約3100万円を騙し取ったとする詐欺容疑で2011年3月、三重県警に逮捕されたんです。共謀者がふたりいました」

 と地元記者。

 釈放された当日、前出のマスターを訪ね、

「すいません。こんな事件を起こしてしまいまして」

 と頭を下げたという。「まだ若いんだからやり直せばいい」とマスターは叱咤激励したという。