死亡率が高い県で生き残る方法は?

 では死亡率の高い県に住んでいる場合は、どうしたら自分の命を守れるのだろうか。医療体制の格差に関しては、一般住民としては対処のしようがないと思うかもしれないが、行政のがん予防対策の基本は、生活習慣改善や検診受診の住民への働きかけにある。裏返せば、自分の生活習慣を見直して、がん検診で自衛することで、地域格差を埋められるということだ。

「ただ、いかに予防を心がけていても、最大のリスクである加齢は誰しも免れません。がんと診断されると衝撃を受け、動揺する気持ちのなかで病院や治療法など重要な選択を迫られることになるのが現実です。自分の命を人まかせにせず、また同時にがんをむやみに恐れないことも大切。日ごろから、がんや地域の医療に関心を持って情報を得ておくことが、いざというときの備えになるでしょう」

がんによる死亡率が高い県

【1位】 青森県 〜がん対策に数値目標なし〜
 がん対策推進計画の全体目標に数値目標がひとつもなく、具体性に欠ける。

【2位】 北海道 〜喫煙率ワースト1位
 肺がん死亡率だけでなく、乳がん死亡率、乳がん検診受診率もワースト1位。

【3位】 長崎県 〜子宮がん検診受診率ワースト3位
 子宮がん死亡率ワースト1位。胃がん、大腸がんなども検診受診率が低い。

【4位】秋田県がん対策会議の人数17人と少なめ〜
 都道府県のがん対策推進計画の策定のための会議の人数が17人とかなり少ない。

【5位】 宮崎県 〜大腸がん死亡率ワースト5位
 大腸がん検診受診率もワースト11位と低め。喫煙率と肺がん死亡率も高い。

6位:福岡県、7位:福島県、8位:岩手県、9位:大阪府、10位:高知県

がんによる死亡率が低い県 【1位】 長野県 〜がん対策に数値目標あり
 がん死亡率は2017年を除き、21年間にわたり連続ベスト1位。

【2位】山梨県 〜胃がん検診受診率ベスト5位
 検診を受けている人が多いためか、胃がん死亡率は全国で5番目の低さ。

【3位】 福井県 〜子宮がん死亡率の低さベスト1位
 がん検診受診率は全国平均並みだが、子宮がん含め全体にがん死亡率が低い。

【4位】滋賀県 がん対策会議の人数51人と多め〜
 都道府県のがん対策推進計画の策定のための会議の人数が51人と多い。

【5位】大分県 〜喫煙率の低さベスト1位
 多くのがんリスクになる喫煙率が低いためか、大腸がんや乳がん死亡率が低い。

6位:奈良県・岐阜県、 8位:岡山県、9位:富山県、10位:島根県

 ※参考資料/『がんの統計2022』(国立がん研究センター がん情報サービス)、『家計調査 2018』(総務省)、『がん対策白書 がん対策基本法成立から15年を振り返る―検証と5つの提案』(がん対策総合機構)

死亡率が高い県でもがんで死なないための鉄則3

(1) 生活習慣を見直す
 禁煙、減塩、肥満解消など、がんリスクの低い生活習慣を心がける

(2) がん検診を受ける
 個人的、地域的リスクを考えて定期的に検診を受診する

(3) 地域医療に関心を持つ
 がんを人ごとと思わず、在住地域の医療情報を得ておく

 教えてくれた人…大井賢一さん ●がん患者を支援する認定NPO法人がんサポートコミュニティー事務局長。歯科医師。2022年、がん対策総合機構の「がん対策の15年を振り返るワーキンググループ」に参加し、日本のがん医療を検証し、提言をまとめた『がん対策白書』の作成に尽力。

〈取材・文/志賀桂子〉