節制(5)終活とお金 〜伝えるべきことは伝えて〜

 夫のお葬式は、自宅で行った家族葬。

「私と子どもたち家族だけ。夫の思い出話を楽しみながら、にぎやかなお葬式でした。まるで寝ている夫の横でおしゃべりしているようで穏やかに送り出せました」

 祭壇はつくらず、お坊さんも呼ばず、戒名もなし。花や写真は自分たちで用意した。

「精進落としも家でやろうって、デパートで食品を買ってきてやったので、かかった費用は22万円ほど。でも送り出す気持ちがちゃんとあれば十分。そのようなお葬式を私もしてほしいと思っています」

手元に分骨し、毎日仏壇に手を合わせる。「仏壇が小さいかわりに、夫の写真を大きく飾っています。狭いわが家にぴったりです」(写真/林ひろし)
手元に分骨し、毎日仏壇に手を合わせる。「仏壇が小さいかわりに、夫の写真を大きく飾っています。狭いわが家にぴったりです」(写真/林ひろし)
【写真】YouTubeでも人気! 美智子さんの作るササッとおかず

 エンディングノートではなくメモを残す。

「“死んだらここからお金を請求して”“お金はここにあるから、一周忌まではここから使って”など、自分が死んだときのために、気になることはその都度メモして引き出しに入れているんです」

 思いがその都度更新されるので、まとまってノートに書くよりも、メモにするのが便利。

読書は脳を活発にし、教室で習う歌は誤嚥予防などにもなる。身体にも心にもよい時間を多く過ごし、死ぬまで元気でいたいという美智子さん(写真/林ひろし)
読書は脳を活発にし、教室で習う歌は誤嚥予防などにもなる。身体にも心にもよい時間を多く過ごし、死ぬまで元気でいたいという美智子さん(写真/林ひろし)

「遺産は、不動産もなく投資信託などは解約してあるので、純粋に現金だけ。

 死んだ後にお金でもめたら寂しいので、使い道はすべてメモに残しています」

 生きてるうちに使い切りたい。

「子どもたちが小さいときは、ぎりぎりの生活だったのでお小遣いはほとんどあげられませんでした。

 そのことで我慢をさせたこともあったんじゃないかと思います。だから今は孫にお金を使っています」

 お金を残して死ぬより、自分が生きているときに渡してあげれば「ありがとう」と言われて、お互いに幸せな気持ちになれる。

「自分が贅沢したいと思わないけど、孫や子どもたちに使うのはひとつも惜しくないですね。

 イベント時に使ったり、みんなが来たら外食をするのが楽しみのひとつです」

YouTubeでも人気! 美智子さんのササッとおかず

 ひとり暮らしでも、栄養バランスを考え、3度の食事は自分で用意し、きちんととるようにしているという。かんたんシンプルでも、好きな器を使って、心も満たされる食事に。毎日続けるにはかんたんが一番という、美智子さんの定番をご紹介。

●さつま揚げのチャーハン

さつま揚げのチャーハン(写真/林ひろし)
さつま揚げのチャーハン(写真/林ひろし)

 卵1個をフライパンで炒り卵にし、取り出す。次にみじん切りにした玉ねぎ1/2個分、細く切ったさつま揚げ2枚分、温めたごはん2杯を入れて塩こしょうで味を調えると、2人分が完成する。タンパク質不足を解消するために、さつま揚げ、ちくわ、笹かまぼこなど練り物を多用するそう。

●大根ときゅうりのしょうゆ漬け

大根ときゅうりのしょうゆ漬け(写真/林ひろし)
大根ときゅうりのしょうゆ漬け(写真/林ひろし)

 大根ときゅうりを1cm角に切り、器に入れたらしょうゆをひと回しかける。時々まぜて数時間おく。大根ときゅうりから水分が出て、ちょうどいい味に。カレーの福神漬け代わりにも。使う調味料もなるべく少なく「混ぜるだけ」「漬けるだけ」が料理のモットー。

『87歳、古い団地で愉しむひとりの暮らし』(すばる舎)著者=多良美智子 ※記事の中の写真をクリックするとアマゾンの紹介ページにジャンプします

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多良美智子さん 昭和9年、長崎生まれ。昔からお金をかけずに家を心地よくする工夫が大好き。中学生だった孫と始めたYouTube「Earthおばあちゃんねる」は登録者数6万人を超える人気チャンネル。「こんなふうに年をとりたい!」の声が殺到している。

(取材・文/樫野早苗)