part3. ホルモン治療って怖くない?

 近年広まりつつあるHRT。ホルモンを身体に補充するってどんな治療?詳しく解説!

 更年期の不調の多くは、卵巣がエストロゲンを作れなくなることが原因で起こる。そこで足りなくなったエストロゲンを物理的に足す治療法が、ホルモン補充療法(以下、HRT)。更年期症状を劇的にやわらげるだけでなく、閉経後の健康維持にも大いに役立つ。

 しかし、HRTを受けている人の割合は、欧米では40%を超えているのに対し、日本ではわずか1・7%といわれる。ホルモンを体内に入れるのは不自然な気がして怖い」という声も多いのだ。

「自然か不自然かという観点では、治療はすべて自然ではありません。ただ、そこを怖がるよりも、必要かどうかで判断することが大切」(高尾さん、以下同)

 HRTで実際に補充するエストロゲンは、更年期以降の健康維持に必要とされるわずかな量。最小限のエストロゲンを補うことで、更年期以降の急激な減少のカーブをゆるやかにし、症状を緩和する。HRTを2か月継続した患者のうち、実に9割が効果を感じられる即効性のある治療法なのだ。

ベストタイミングは閉経前から閉経直後

 HRTの治療は、医師から処方されたホルモン剤を自分で使う方法が一般的。エストロゲン剤とプロゲステロン剤を組み合わせて使うケースが多い。

 処方薬には経口薬や、パッチやジェルなどの経皮薬などのタイプがあり、ライフスタイルによって選択できる。更年期症状の治療を目的とする場合は、ほとんどが健康保険適用となり、診察料などを除いた1か月の薬代の目安は1000~3000円程度。

HRTの効果を最大限活かすためには、閉経前か閉経後早期に始めるのがベスト。遅くとも閉経後5年以内に始めることが推奨されています」

 ただし、年齢や症状、既往歴などによっては血栓症のリスクが高まる可能性もある。

 また、休薬期間を取り入れるケースもあるため、医師によく相談のうえ検討を。

穏やかに改善する漢方治療も

 自然な治療法を求めるなら、漢方も選択肢のひとつ。

自分の身体を自分で守るという意識が、閉経後ますます重要になります。HRTでも漢方でも、治療法を自分で選択する意思を持つことが重要です」(関口さん、以下同)

 代表的なものは、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、加味逍遙散(かみしょうようさん)の4つ。薬局でも手に入るが、より自分に合った漢方を探すのであれば病院へ。検索サイト『漢方のお医者さん探し』を使えば、漢方薬に詳しい最寄りの病院を見つけることができる。

「漢方のほか、アロママッサージや鍼灸なども、症状を和らげることが期待できます」