防弾カバンを盾に身を守るSPらしき人物の姿も(目撃者提供)
防弾カバンを盾に身を守るSPらしき人物の姿も(目撃者提供)
【写真】安倍元首相が発砲された瞬間、警護と思しき者がとった行動

 聴衆から「イヤ〜ッ」と悲鳴があがる中、

「救急車!」

「お医者さんはいらっしゃいませんか!」

「AEDをお持ちの方がいたら来てください!」

 などと関係者が周囲に呼びかけた。

 途中から遊説用の拡声器を使い、

「看護師さんはいらっしゃいませんか! どうかお助けください!」

 と絶叫に変わった。

 心肺停止状態の安倍首相は救急車とドクターヘリを乗り継いで奈良県立医科大付属病院に搬送され、懸命に救命措置がとられたが、同日午後5時すぎに死亡が確認された。銃弾は心臓にまで到達していたという。

都内の自宅から病院に駆けつけた昭恵夫人(60)の願いも叶わなかった。

 演説を聞いていた男性が振り返る。

「いつも自民党候補が苦戦する選挙区のためか、安倍元首相は先週もこの駅前の別の場所で応援演説をしていたんです。とにかく大きな音とすごい煙で、1発目は何が起きたのかわからず、2発目で安倍元首相が倒れたあとはガードレールの隙間から顔が見えました。流血がそんなになかったように見えたので、亡くなったのは残念でなりません」

 スーツの下の白いワイシャツの左胸は鮮血に染まっていた。背後から狙われ、射程距離は5メートル程度とみられている。

 現場入りした元大阪府警の犯罪ジャーナリスト・中島正純氏は「発砲されたのは警察の完全なミス」と指摘する。

発砲した銃弾は約60メートル先まで…

「安倍元首相専属のSPが東京から1人、地元警察から十数人のSPが警備にあたる中、怪しい人物が至近距離まで近づいていたことに気づかないのはあり得ない。金属探知機を使った現場検証で、発砲した銃弾は約60メートル先の横断歩道周辺まで12、13個くらい飛び散っていたことがわかった。2発目が右の頸部と左の胸に当たった」(中島氏)

 事件当時の動画を見ると、演説中、安倍元首相の背後で腕組みするマスク姿の山上容疑者が映っている。黒髪にメガネ、グレーのポロシャツにポケットのたくさんついた軍用パンツのようなスタイル。たすき掛けしたバッグには、2連筒の銃身を黒いビニールテープでぐるぐる巻きにした手製のハンドガンを忍ばせていたようだ。

 演説に拍手をする姿もあり、不審人物と思われないよう配慮していた。

 元海自隊員であれば、銃の扱いには慣れていたはず。どのような人物なのか。冒頭の高校の同級生はこう話す。