のどの違和感は昨年からあった

 実は、のどへの違和感は昨年の9月からあり、ツイッターにもつぶやいていた。

「のどにひっかかりがあったので、歯科や耳鼻科で診てもらったのですが、『異常はないから大丈夫』という診断でした。声も出ていましたし、安心していましたが、4月に新型コロナワクチンの3回目を打ったとき、ものすごくのどが腫れたんです。

 ちょうどその後、名古屋医療センターとの医療プロジェクトに参加させていただいていたので、大きな病院ですし、あらためてのどの診察をお願いしました。すると毎月診てもらううちに、腫れが次第に大きくなっていったんですね。念のため細胞検査をした結果、中咽頭がんだとわかりました」

 がんのステージは3。音楽活動が軌道に乗り始めた矢先でのがん宣告に、「心の中が塗りつぶされたような気分になった」という。

「でも金谷さんも現在の所属事務所の社長も、『絶対治るから大丈夫』と励ましてくれて、治療に専念できる環境をつくってくれました。ツイッターで病名と治療の決意を報告すると、とても多くの方から応援の声が届き、『頑張らなくては』と背中を押していただきました」

 手術はせず、放射線と抗がん剤治療を選択した。8月から治療をスタート。放射線治療は35回で、週5日間を7週間(そのうち抗がん剤投与のための約1週間の入院を3回含む)というスケジュールだ。

「主治医の話では、がんが声帯の前にできているため、のどに傷がつかず、歌も歌えて、話すことも問題がないとのことでした。しかし、プロの歌手が放射線治療を選択した事例がないので、元どおりに歌えるようになるかは保証ができないと。放射線はがん細胞だけでなく、いい細胞も殺してしまうので、筋肉が硬くなって、声が出しづらくなる可能性はあるんです。

 その話を聞いたときに、治療がとても怖くなってしまい、少し考える時間をいただきました。でも周りから励ましてもらい、『前例がないなら自分が成功例になればいいんだ』と前向きな気持ちになれて、今も治療を頑張っています」