時を同じくして『おかあさんといっしょ』からオファーが舞い込んだ。体操のテーマ曲『ぱわわぷたいそう』を歌わないかと打診され、メインボーカルを務めた。続いて番組用に新曲をと請われ、『ぼよよん行進曲』を書き下ろす。

「『三百六十五歩のマーチ』が子どものころから大好きで、行進曲でいかせてくださいとお願いしました。“しあわせは〜”で始まるあの曲は僕の中の究極の幸せのイメージで、いつも元気をもらっていたんです。僕も離婚するなどシンドイことがあったけど、つらい経験もいつか報われるという思いを込めた曲でもありました」

“無邪気さ”が一番の原動力

 地元・岡山への貢献に子どもたちのサポートと、気づけばサンフランシスコで思い描いた夢が次々形になっていた。

こうしたいと本気で思ったことってどこかから風が吹いてくるから不思議ですよね。大切なのはそこで100%無邪気になり切れるかどうか

 と中西さん。自身にとって無邪気は一番のテーマだと話す。

若々しくアーティストらしいおしゃれな服装の中西圭三さん
若々しくアーティストらしいおしゃれな服装の中西圭三さん
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「『ぼよよん行進曲』もワクワクの塊で作れた。没頭し、いかに無邪気に自分の力を発揮できるか。朝日を浴びてワクワクするのもある意味、無邪気のトレーニングだと思っています」

 元来の朝型で、“朝活推奨シンガー・ソングライター”を自認する。朝の散歩が習慣で、「歩き出すと楽しくなって、気づけば2時間たっていた、なんてこともしょっちゅう(笑)」

 レギュラー番組『朝ぶら散歩』は5年目に突入。ナビゲーターとして、朝日とともに散歩旅の魅力を紹介してきた。

 ところが今年5月、下血をきっかけに胸腺腫(きょうせんしゅ)が発覚。腫瘍は4cmに達していたが、8月に内視鏡手術を受け早々に復帰。病状を心配していたファンを喜ばせた。

やはり日頃からよく歩いているから回復が早かったのかも(笑)。見つかったのが母の日だったので、母からのメッセージと捉えています

 日常を取り戻した今、改めて目指すものはというと?

「サンフランシスコでもらった言葉の答えをまだはっきり出せてなくて――」。自問自答は今なお継続中だと語る。

アイデンティティーがなければ世界を振り向かせることはできない。それは確かだけれど、はたして自分の中にどんな血があるのだろうと……。この秋『蛇腹楽器200年祭』で素晴らしいアーティストと共演しますが、それも僕には勉強でありひとつのチャレンジ。こうした機会を重ねていくことで、いつか宿題の答え合わせができればと思っています」

中西圭三 1964年岡山県生まれ。ミュージシャン・シンガー・ソングライターとして活躍。ZOO『Choo Choo TRAIN』など‘90年代を代表するヒット曲を数多く手がける。10月18日(火)に開催するcobaプロデュース「蛇腹楽器200年祭」に出演

取材・文/小野寺悦子